ネットから「降りる」か「残る」か

ウェブでメシを食うということ
毎日新聞出版 (2016-06-30)
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 ちょっと風邪気味ではあるし、やらなければいけないタスクが一段落したということもあって、最近読了した中川淳一郎氏の『ウェブでメシを食うということ』の感想みたいなものをざざっとメモ。

 まず。この本はウェブで稼いでいくということが主題ではなく、中川氏が博報堂に入社して社会人となり、退職後に『テレビブロス』などでお仕事をして以後に『アメーバニュース』『ニュースポストセブン』などを立ち上げに関わった間に交遊があった人々についてを交えた自伝的作品だといえるだろう。マイケル・ウィンターボトム監督の『24・アワー・パティー・ピープル』の2000年代東京IT業界版として読むと実に面白いし記録的な価値もあると思う。
 
 とはいえ。考えさせられたのは、中川氏がネットの世界、というか社会から「降りる」日がそう遠くないと準備していらっしゃるような描写が節々に感じられたことだ。まぁ、365日ほぼ休みなしで稼働することが宿命のネットニュースという仕事は、体力がないとキツイし、常にネットの感性というものを維持するために浴びるような情報収集を常に求められるし、そう長い間にやる仕事ではないのかもしれないな、と思ったりもする。
 だから、中川氏が40代のうちにキャリアから「降りる」という選択をするというのは賢い生き方のように見えると同時に、そこまで30代の間にウェブで稼げなかった自分としては羨ましくもある。

 30代のうちは、ネットの情報に対して瞬発力のあるアウトプットができたり、流れてくる情報を出しているユーザーの感覚を読むことができた。それがこれから先ずっと出来るのかどうか。ネットから降りずに「残る」という選択をした場合、それが求められる。そして、それはとても難しいのではないかと、日々のニュースやツイート、知り合いのFacebookやInstagramを横目に、ぼんやりと思いはじめている自分がいる。

 最近も、PCデポの高額解約料騒動の問題がTwitter発で明るみになって、「トウゼンカード」なるノルマの存在など次々と明るみになる中、徳力基彦氏が日経新聞電子版のコラムにボヤっとした記事を出して、若干ボヤって(小炎上)していた。

 PCデポ炎上 世間は適法より「適切」重視(徳力基彦):日本経済新聞

 徳力氏ほどの人がこれほどピントの外した記事をブログではなく日経新聞に出してしまうというあたり、2016年というメディア環境を象徴しているとも言えるし、彼ほどの人でもネットの「空気」がちゃんと読めないことがある、ということには個人的に若干衝撃を受けた。長年ネットで仕事をしている人でも、「やらかす」ことがあるのだ。そして、ネットメディアでは一回の失敗の傷がテレビや紙媒体よりも深く長く尾を引く。

 そんな中で、この先10年20年と戦い続けていけるのか。正直私自身は不安に感じている。まぁ、メディア環境は日々変わるし、元切込隊長氏が『Yahoo!ニュース個人特別企画』でおっしゃているようにそこに適応してなんぼではあるけれど、いつまでその気力と体力が続くかなぁ……。
 そういう意味でも、中川氏の「店じまい」感は生き方として学ぶべきところは多々あるし、なかなか真似はできないけれど、「残る」にしても「分からない」ものは「分からない」として置いておく勇気が必要なのかな、と感じる機会が増えているのは確かだったりするのだった。

 なんだかまとまりがないけれど、この辺で。とにかく、『ウェブでメシを食うということ』は20年後くらいに映画化されるべきだと今から強調しておきたい。

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