気を強く持つ、ということ(後藤浩輝騎手への追悼に代えて)

 後藤浩輝騎手が亡くなった。自死ということだ。

 後藤浩輝騎手が自宅で死去 (netkeiba.com)

 彼の騎乗で真っ先に思い出したのは、2001年の京都大賞典のステイゴールド。直線で左に斜行し、少し後から追い出したナリタトップロードの渡辺薫彦騎手が落馬。1位入線したものの失格となった。
 その後、香港Cを制して種牡馬入りし、オルフェーブルをはじめとする産駒を送り出したステイゴールドも、2月5日に亡くなった。東スポでは、後藤が当時を振り返り、「最悪の結果に終わった印象が強いです」といいつつ、「あの馬の本当の強さを感じたレースでもありました」とコメントしている。

 ステイゴールド急死に後藤騎手「思い出のレースは失格した京都大賞典」(東スポWeb)

 ここで、彼は次のようにも語っている。

 「産駒は必ずお父さんが持っていた怖さや危うさを受け継いでいますから。だから自分もステイゴールド産駒に乗るときは、お父さんの時と同じように人間が負けないよう強い覚悟を持って接するようにしています」

 強い覚悟。
 彼は、いつだって気持ちの強さで競馬に臨んでいた。2000年のダイヤモンドステークス。テン乗りのユーセイトップランを早めに仕掛けて先団に取り付き、直線に入る前には先頭に。そのまま押し切って1着でゴールしてしまった。それまでの追い込み一辺倒だった脚質からは想像もつかないような騎乗だったが、何よりも驚かされたのは、レースの直前に山元トレセンの厩舎が全焼、焼死した22頭の中にはユーセイトップランも所属している音無秀孝厩舎のエガオヲミセテも含まれていたからだ。関係者は「エガオが後押ししてくれた」と口を揃えたが、そこに後藤の「なんとかしたい」という気持ちが乗っていたからこその奇跡のような勝利だった、と今では思う。

 その後、数度の落馬を毎回克服して競馬場へと舞い戻った。それも彼自身の気力の成せる技だったとしかいいようがないのだけど。「気持ちが強い」ということは、ふとした時にそれが切れることがあるのではないか。
 「将来に対する唯ぼんやりした不安」という言葉を残したのは芥川龍之介だが、40歳前後という年齢はさまざまな変化に晒される。常にピンと張り詰めた気持ちを持っているほど、そういった理由が知れない途方もなさを感じてしまった時に、魔が差してしまうのかもしれない。

 この喪失感は簡単には埋められない。スポーツ各紙がこぞってタイトルを「なぜ?」としたように、私自身も問わずにはいられない。だが、ひとつだけ分かるのは、12949戦1447勝という記録は、この先競馬が続く限り刻み込まれるということだ。記憶は色褪せるかもしれないが、記録は残る。

 これまで何度も馬券を取らせてくれたり、ハズレさせてくれて、ほんとうにありがとうございました。
 どうか安らかに。

『withnews』東洋経済オンライン山田編集長インタビューは良い”リトマス試験紙”説

 ちょっとバタバタしているParsleyです。ごきげんよう。

 こんなことしている場合ではないのだけど、 ここのところ約3回ほど、下記のようなやり取りを別のひとと交わしているので、これはエントリーにした方がいいな、と感じた次第。

Q:「この『東洋経済オンライン』のインタビュー、どう思います?」
P:「んー…。個人的に良いデキとは思いませんね…」
Q:「えっ」

 そう、朝日新聞社系のサイト『withnews(ウィズニュース)』『東洋経済オンライン』山田俊浩編集長インタビューについて。

 東洋経済、月間1億PVの秘密 「ヒットの法則はデータが語る」・上
 「あんな無料サイトに書くな」 東洋経済は意識をどう変えたか・中
 編集部8人で「年商10億円」へ 東洋経済オンラインの稼ぎ方・下

 内容に関しては、「ここまで出しちゃうんだ」ということまで踏み込んでいて、なかなか面白かった。とはいえ、それは私自身もメディア業界の隅っこで働いているからであって、「良い」インタビューかと問われると、「微妙」なように思えちゃうんですよね。
 「微妙」だと思うのは、おおまかに言って3点に集約される。

 1、既出が多いこと
 2、ツッコミが甘いこと
 3、長いこと

 1については、既に2014年10月の時点で、毎日新聞がインタビューを出していて、例えば佐々木紀彦前編集長への対抗意識はこちらでも充分に感じ取ることができるし、PVの増加についても言及されている。

 「ニュース重視」にシフトした東洋経済オンライン、狙いは 山田俊浩さん

 逆にいえば、既に毎日新聞で出しているからこそ、山田氏vs佐々木氏というフレームアップを取らざるをえなかったのでは、とも思える。割と東洋経済や『NewsPicks』から距離のある私の耳にさえ、佐々木氏の手法について「うわぁ」と感じる話は入ってきていたから、メディア関係者にとっては「引き抜き」うんぬんの話は驚くことでもないのではないか。
 ちなみに、私に感想を求めてきた方々はみんな毎日のインタビュー未読でした。

 2については……。まず中編での「赤枠が広告枠」という画像にひっくり返った。いやいやいや…「それだけ」じゃないのは自明でしょ…。
 まぁ、このあたりは媒体資料を見れば済む話なので良いとして。個人的には、彼らのいうところの「編集記事風タイアップ体裁」の位置づけと、山田編集長のいうところの「広告主が売りたい商品を東洋経済オンラインのサイト上で売っていくための記事」について、もう少し踏み込んで欲しかった。
 あとは、「編集部員8人」と強調しているあたりも、若干違和感を覚えた。「8人だけでやっているものではないので、まだまだ十分に利益貢献できているというレベルではありません」と山田編集長は語っているけれど、それだけの人員をかければ「年内に月商1億円」というのは控えめな目標設定に思えた。このあたり、ツッコミが不足しているか、あえて触れずに数字を出しているのかどちらかなのだろう。

 3については……。私のような曲がりなりにもメディアでお仕事をしているひとならば読むだろうけれど、そうでない人が関心を持つトピックだろうか…と問われると考え込んでしまう。そういう意味では、毎日のインタビューの方が読みやすいしよく纏まっているのでは。とはいえ、インタビューは聞き手の関心のあるトピックをパッション全開でやったものが面白いともいえるから、否定はしませんけれどね。とはいえ、長い……。

 個人的には、全体として記事を担当した古田大輔記者と山田編集長の距離の近さを感じさせる内容のインタビューだな、と思う。なんとなく「仲の良さ」を感じさせるというか……。それが佐々木前編集長に言及するあたりに出ているのだろうし、踏み込みが「甘く」感じられる理由なのかもしれない。
 そんなわけで、このインタビューについてどう感じるかは、メディア関係者にとって良い”リトマス試験紙”なのではないかと思う。おそらく、この内容について「すごい」的な感想を持つのであれば、インタビューの聞き手もしくは対象と近しい人か、ネットメディア関連のこれまでの議論に関心を持っていなかったか、単に感動屋さんなのか、いずれかなのではないだろうか。

 私は性格が悪いから、山田氏と佐々木氏の確執がどうなろうと知ったこっちゃないし、むしろ内心では両者とも潰れてほしいと思うわけなのだけれど、どちらもサイト規模・収益性の双方の面で成功し並び立つ可能性が高いと思う。一方で、たとえば数年後に東洋経済が『NewsPicks』を買収するということがあっても驚かないし、角川春樹氏との衝突でメディアワークスを立ち上げた角川歴彦氏が角川書店に復帰したように、佐々木氏が実績を引っさげて東洋経済に戻ることだってあるかもしれない。今回の事象について、そういったメディア関係者の居酒屋トーク的な楽しみ方がWeb上に顕在化したというあたりは、ポジティブに捉えることができるかもしれない。

 こちらからは以上です。

 

「このメディアは見ない」と決めている人は意外に多かった (JCEJアワードの御礼にかえて)

 1月24日に開催された日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の『ジャーナリズム・イノベーション・アワード』。Parsleyも出品させて頂きました。

 JCEJのアワードに出品した2、3の理由

 ぶっちゃけ、準備にかけられたのは6時間がいいところという体たらくで、直前まで超ナーバスになっていたのだけど、会場では思いのほか多くの方が関心を示してくれて、さまざまな質問を頂くことができました。ひとりでの参加で、2時間以上しゃべり通しで喉がカラカラになったけど、なんだかコミケや文学フリマみたいで楽しかったです(180cmのテーブルまるまる使えたし!)。改めて来場された皆様と、運営委員各位に感謝を。ありがとうございました。

 さて。アワードに出品するにあたり、ちょっとしたアンケートを思いつきでやってみた。
 『「ジャーナリズム」って何ですか?』と題した7つの質問を、2015年1月23日23時より27日7時までの間、Webサービス『SurveyMonkey』を利用して募集。告知手段は会場ブースでの誘引と、このブログ・twitter。年齢・性別などの属性は取らずにお答え頂いています。
 その結果、期間内で32件の回答がありました。ご協力頂いた皆様、ありがとうございました。

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「ジャーナリズム」という言葉に、どのような印象を持ちますか?

10:ポジティブな印象
10:ネガティブな印象
10:特に何も感じない。

日本の「ジャーナリズム」は、インターネット普及後に変化したと思いますか?

16:変化した。
13:変化していない。

ニュースの記事・番組で、媒体がどこなのか気にしますか?

26:気にする。
6:気にしない。

「ここのコンテンツは絶対に見ない」と決めているメディアはありますか?

20:ある。
12:ない。

「ジャーナリズム」を担うには、実名を出して発信するべきだと思いますか? それとも、匿名でも鋭い内容ならば良いと思いますか?

12:実名を出すべき。
20:匿名でも問題ない。:

現在の「ジャーナリズム」は、紙・放送・ネット問わず、読者・視聴者の期待に応えていると思いますか?

3:思う。    
29:思わない。

「ジャーナリスト」は、専門的な訓練を受けた人がなるべきだと思いますか?

19:思う。
13:思わない。

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 正直サンプル数が少ないこと、もともと「ジャーナリズム」に関心がある層だと推測されるとはいえ、個人的にはなかなか面白い結果になった。

 特に、「媒体がどこか気にするか」という質問に、8割以上がYESというのにはびっくりさせられた。自由記載のコメントとしては、「情報の出元がどこなのか、裏打ちされるのか」「媒体によって、信頼する度合いを可変させています」という声が寄せられた。一方で「気にすべきと思いますが、日々それを考えるリソースを割けていません」という人もいたようだ(個人的には、こういう人が多いのでは、と予想していた)。

 また、「見ないと決めているメディアはあるか」といった質問についても、「ある」が「ない」を上回った。
 媒体としては「バイラルメディア全般」や、特定のジャーナリストが関わるコンテンツは全て見ないといったもの、新聞・テレビの報道番組を名指しで挙げる人もいて様々だった。このブログが時折転載していてお世話になっている『BLOGOS』の名も挙がっていて、ちょっと悲しい気持ちになったことも敢えて記しておく。
 ほかにも、「見ないかどうかはともかく、ある分野に関する情報について、発信されている内容が信用出来ないなという人や会社はあります」というコメントも寄せられていて、媒体によって判別するというメディア接触は、思っていたよりも多いようだ。
 
 発信者の匿名・実名の是非や、ジャーナリストの専門性の訓練の必要性については、数字が割れた。これはメディアの従事者と第三者では違ったのではと思うが、今回は確認する術がない。
 そして。「現状のジャーナリズムは読者の期待に答えているか?」という質問には、9割以上が「思わない」という返答だった。これは、紙・放送・ネット問わず(私も含めて)メディアの中の人は重く受け止めるべきだし、中の人も少なからず危機感を頂いているということは確かだと思う。
 まぁ、危機感がなければ今回のアワードは開催されなかっただろうし、そのあたりは自分自身でもできることをできるだけやってみるつもりです。

 アワード当日の模様は下記リンク先で。来年も開催があるとすれば、もうちょっと作戦練って参加したいなぁ、と思っています。今のところはノーアイデアではありますが……。

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