ビジネスチャンスとしてのオープンガバメント

ウェブで政治を動かす! (朝日新書)
津田大介
朝日新聞出版 (2012-11-13)
売り上げランキング: 1,070

 津田大介氏の『ウェブで政治を動かす!』では、大きく分けて「ネット選挙」と「オープンガバメント」という2つのテーマについて論じられている。このうち、前者については安倍自民党政権になってネットでの選挙活動が解禁になるよう法改正が検討されることだし、野党もおおむね総論では賛成のようだから次の参議院選挙で実現される可能性が高い。というわけで、「ネット選挙」に向けてのオピニオンに関しては現実がアップデートされたように思う。

 もう一つのテーマである「オープンガバメント」については、まだまだ関心が低いテーマであるけれど、実のところこれは政府のあり方から行政サービスの移管、民間産業の参入による新しいビジネスの機会創出という側面があるので、非常に重要な政策課題だ。

 日本では、2010年に経済産業省がオープンガバメント・ラボを開設されて以来、広く意見集約が実施されている。また、内閣府の「国民の声アイデアボックス」や文部科学省の「熟議カケアイ」といった政策に対する意見や課題を集める試みが民主党政権では行われた。
 しかし、どれもPRが不足していて存在すらあまり知られなかったというのが実際のところのように思われる。特に既存メディアが、この試みの重要性に対する認識が不足しているという事情があるにしても、もうちょっと広まる努力を省庁サイドがするべきだったような印象を受ける。

 それで、「オープンガバメント」の本質は、ただ単に情報公開するだけでなく、その公開されたデータを用いて行政サービスを補完するようなビジネスが誕生させることができるところにある、というのがParsleyの認識。
 データが公開されてダウンロードすることが出来れば、例えば時間が決まっている窓口業務をリアル/ネットを含めて代行するサービスを立ち上げることが可能だったり、待機児童や独居老人向けの情報を活用したサイトなどを作ることができるだろう。
 要するに、各省庁や自治体が溜め込んでいるデータをAPIで公開するだけで、新しいビジネスの創出につながるわけだ。

 だから、情報公開というのは「オープンガバメント」を捉える上では一面を捉えているに過ぎず、新しいビジネスと雇用の創出のためにさっさと死蔵しているデータを公開しましょう、ということを関係者はもっと声を上げるべきだと思う。
 おそらく、「情報公開して健全な社会を!」と主張するよりも、データビジネスの今後の成長見込みなどを出した方が、政治家の皆様やあんまりこの課題に関心のない一般市民へのウケはいいだろうから、アナリスト各位のご活躍に期待したいところですね。

 そんなこんなで。2013年は経済産業省を中心にオープンガバメント関連の動きを積極的にウォッチしていきたいと考えております。

 しかし、津田氏の本、kindle版が出るまで買うの待つべきだったなぁ…。数百円でも安い方がいいものね…。

ウェブで政治を動かす!
朝日新聞出版 (2012-11-13)
売り上げランキング: 64

『SmartNews』転載問題は感情論

 Parsleyにしては珍しくイケダハヤト氏のご意見に賛成だったので。

 SmartNews問題、転載されているブロガーとして思うこと(ihayato.news)

 ネットにおける全文引用に関しては、各新聞社がそれを禁止する条項をサイトのポリシーにして、ネットユーザーから時代にそぐわないと批判もされてきたけれど、今回メディアの中のひとが「悲しい」とか表明するのも、全く同じ構造なので、正直にいえば「くだらないなぁ」と思ってしまう。

 それまで、ネットでの引用転載でもリンクが張られていればトラフィックが流入してアクセス増が見込めたから表向き黙認していたけれど、アプリだとそれがないからNGというのは、メディアの中のひとの理屈で読者の利便性をまったく考慮されていないご意見ですよね、と言わざるをえないし。

 また、このような「タダ乗りが報道機関を弱くする」、とツイートされていた方も見かけたけれど。「ジャーナリズム」を支えるために各新聞社がどのような販売をしたり、押し紙問題に代表されるような発行部数の水増しを行なってまで広告費で稼ごうとしているのかという黒い側面を新聞奨学生の立場から見ていたParsleyとしては、ノスタルジックなご発言ですね、と言いたくなるし。

 それよりも、なぜ『SmartNews』のようなサービスが登場してユーザーからの支持が集まったのか、ということをメディアの中のひとはもっと真剣に考えた方がいいと思う。
 例えば、ページビュー数を増やすために、一つの記事をいくつもページ分割したり文章中に広告を挟むのは、読み手の側からすると非常に見づらい構成になっている。また、スマートフォンやタブレットに読む際にストレスのあるページになっているサイトも多い。
 もちろん、広告収益モデルにしている上は、PVやUUがダイレクトに響いてくるという事情があるにしても、それはメディア企業のビジネスの問題であって、読者は預かり知らないところ。
 メディアもサービスなのだから、ユーザー目線に立ったサイトやアプリを用意するなど、リソース割けるところはいくつもある。例えば長文で読む利便性を考えてePubに準拠したデータを提供してみたり、ニコニコ動画が運営しているブロマガに似たサービスを立ち上げるとか、個々でリリース出来ることはたくさんあるのではないだろうか。

 まぁ、『SmartNews』の転載・引用に関して問題にしたいならば、それは各社の法務部のお仕事だし、そこでしかるべき手打ちがそのうちある可能性はあるだろう。トラフィックが流れたり、一定のフィーが各メディアに入ればそれでOKということになるかもしれないけれど、それって書き手がいくら考えても何の解決にもならないしね。

 ブログや各メディアで記事を書かせて貰っている立場からすれば、とにかくよいコンテンツを一本でも多く出すことが自分のためでもありひとのためでもあるわけだから、『SmartNews』に転載されようがされまいが、書いて書いて書いて書く以外のことに構っている余裕なんかありません。

 そんなこんなで。いろいろ作業が溜まっているのでこれにて。よいクリスマスを!!

最近のおしごとや寄稿など

『Drillspin』でボカロ曲レビュー担当しました。

 エンタメサイト『Drillspin』の音楽コラムは、ビジネスで関わっている方や長らく活躍しているレビュアーばかりで、そこにParsleyふぜいがでしゃばっていいものかとも思いましたが、『Who’s Next』『読むナビDJ』というコーナーで続けてボカロPと作品について書かせて頂きました。

 第2回:2012年のボーカロイド曲シーンの現在地 DrillSpin Column(ドリルスピン・コラム)
 第52回:今からでもシーン最先端がわかるボーカロイド曲10選 DrillSpin Column(ドリルスピン・コラム)

 選んだボカロ曲は氷山の一角に過ぎないので、これまで興味なかった方にも刺さるとうれしいなぁ。
 
『ガジェット通信』で大臣会見のレポート記事書いています。

 先の選挙に負けた民主党政権の大臣の会見の模様を記事にしています。やはりいつ行っても質問するのは緊張しますが、その場でしか起こらない面白い出来事もあったりするので、オールドメディアの記事に食傷しているという方にお読み頂きたいです。

 敗戦の弁かく語りき……岡田克也副総理会見「与党としての自覚が充分ではなかった議員がいた」
 敗戦の弁かく語りき……前原誠司経済財政担当大臣会見「試行錯誤してきたことは前向きに受け止めている」

 自民党政権になってからも、なんとか会見には出続けたいので、今はいろいろ手を回している最中です。期待せずご期待下さいませ。

★図書館・図書室アンソロジー『書架にねむる。』にコラムを寄稿しました。

書架にねむる。
書架にねむる。

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泉 由良 いぬのほねこ 久地 加夜子 くまっこ 田中 理桜 鳥久保 咲人 Parsley 日野 裕太郎 壬生 キヨム
密林社
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 『象印社』としてすてきな豆本や小説をコミティア・文学フリマにお出しになっているくまっこさんに、「図書館をテーマした本を作るのでコラムお願いできますか」とお話しを頂いて、短いコラムを3つ寄稿いたしました。
 掲載されている短編作品は、図書館に思い入れのある方なら是非とも読んでもらいたいなぁと思います。
 あと、裏に図書カードが挟まっていたり、背表紙にシールがあったり、ノスタルジーを感じさせる趣向が凝らしているので、コレクションとしても価値の高い一冊です。本好きの方にもお手に取ってもらえるとうれしいです。

ペニーオークション事件で明らかになったネットメディアのタブー

 ペニーオークションサイト『ワールドオークション』による詐欺事件の報道やネットでの動きについてメモ代わりに。

 ほしのあき、オークションサイト手数料詐欺事件で謝罪文「軽率でした」(msn産経ニュース)

 これには、ネット上で「ステマ」をしたほしのあき女史を叩くユーザーが多い様子だけど、もっと問題なのが事件が明るみになった当初、ほとんどのメディアがほしの女史の名前を出さずに「タレント(35)」と表記して報道していたこと。
 実はネットメディアの多くは、タレント絡みの犯罪がタブーになりつつある。理由は簡単で、各メディアとも運営母体がブログサービスも展開していて、その顧客がタレントや所属事務所なので利害関係が生じているため。また、モデルやタレントの情報を発信しているメディアも、リリースを貰ったりイベントに出席したりする間に、金銭の授受といった関係はなくても知らず知らずのうちにタレントサイドの意向に沿うような立ち位置になりがちで、相互の関係に問題が発生するような情報を出さない判断する場合が多いような印象を受ける。

 ■「ステルスマーケティング」は悪ではない

 かくいうParsleyも、紙・ネットを問わず記事広告やコンテンツ広告の案件をお手伝いすることがあるのだけれど。事実を正確に記している限りにおいて「ステルスマーケティング」は問題がない。とはいえ、特にネット上ではあからさまに推していることが分かると「ステマ乙」と見抜かれてしまい逆効果に終わることも多いから、細心の注意を払った上で実施した方がいいということをクライアントには話すけれど。
 もともと、記事広告は新聞や雑誌では一般的な手法で、知らない人からすれば広告なのか記事なのか見分けがつかないものがほとんどだろう。でも、見る人が見れば分かる。そのポイントを指摘するのは別の機会に譲るとして、それが記事広告だと見抜くことも含めて「メディアリテラシー」の部類に入るでしょ、というのが私の立場かな。

 では、どういった場合に問題になるのかというのは、単純な話で法律に抵触するから。
 ペニーオークション事件の場合、事実上落札できないものをあたかも落札できるように見せかけてユーザーに購入を促すシステムが詐欺の疑いがあるし、それを金銭の授受を得て虚偽の内容をブログという自分の「メディア」に載せたほしの女史らタレントには詐欺幇助の疑いがかかる。
 また、事実と異なる誇大な広告を載せることは、景品表示法に定められる「不実証広告」に当たる可能性が高い。(参照

 要するに、広告と明示しない広告に法的な規制はなく、またかける必要もないが、犯罪を助長するような内容や事実と違う内容を掲載しちゃだめでしょ、という至極単純なことなのだけれど。これが特にネット上においては守られていないケースが散見されるんですよね。

 ■ブログ運営会社は悪くないのか

 タレントに限らず、ブロガーが商品や金品の提供を受けて広告記事を書くということは今後ますます多くなっていくと思われるのだけれど。今回のケースのように、影響力のあるブログが虚偽の内容を発信したことについて、サービスを提供する運営会社に過失はないのだろうか?
 非常にグレーなのは、特にタレントの場合本人や所属事務所に幾らかのギャンティが発生している場合があること。そして、タレントのブログがサービス全体のアクセス数を支えているケースが多く、サービスの広告収入に影響を与えているという事実だ。
 
 もちろん、ブログの内容に検閲を加えるというのは表現の自由に反するからやってはいけないのだけれど。今回のように複数のタレントが広告費を得て詐欺行為に加担するというのは、運営会社にもリスクになる。ブロガーの信用だけでなく、ブログサービスの信用も落ちることになるからだ。ブログを開設・運営にギャランティが発生している場合には、チェック体制を築くことが求められるし、そのようにしないと運営会社自体の一般ユーザーからの信用が失われていくのではないだろうか。
 
 ■ネットメディアに矜持なんかありません

 前述したように、ブログ運営会社の大手は自前のニュースポータルサイトを持っている。そのため、今回のようにタレントが問題を起こした場合、そのニュースを掲載しない、もしくは大きく取り上げないという例が少なくない。
 このことは、ネットがテレビ・新聞といったオールドメディアに取って代わるという期待を大きく損なう可能性がある。そういった意味でペニーオークション事件では今のメディア業界でどのような力関係なのかがキレイに浮き彫りになったとも取れる。タレント所属事務所や広告クライアントに対して角が立つことは出来ないという現状は、ニュースポータルサイトの公共性と矜持がどこにあるのかという疑問をリテラシーの高いユーザーに与えたのではないだろうか。
 私の知る限り、ほとんどのニュースサイトは内部に甘いし、利害関係が少しでもある場合はユーザー側ではなくクライアントを向く担当者の方が多い。それは各サイトの編集部が部内で独立していないか、セクションとしてまだ弱いという事情があったりするのだけれど。犯罪が絡んだ場合に率先して事実関係を明らかにする勢力がほとんどないというあたり、まだまだ週刊誌の役割は大きいし、ネットメディアってダメダメだな、という感想を持ってしまうよなぁ…。

 そんなこんなで。クライアント、特に芸能事務所に対してネットサービス運営会社は異常に甘く、それがニュースにも影響しているのはどうなのよ、というオピニオンを誰も上げていないので上げてみました。
 というか、日本には一応口コミマーケティングの適正を目指すWOMマーケティング協議会という団体があったりして、ほしの女史のブログを運営するサイバーエージェントも会員だったりするのですが。今回の事件に関して何らかの見解出さないでいいのかしら?

ライターになるために必要なたった1つの資質

 なんかイケダハヤト氏のエントリーが話題になっているようだったので。

 未経験からフリーランスライターになる方法(ihayato.news)

 もう既にHagex氏が指摘しているように(参照)、このエントリーは実態からは大きくかけ離れている上に多くのひとに「ライターってこうやってなれるんだ!」とミスリードしている可能性が高い。

 Parsleyがライターをするきっかけになったのは、2004年にブログを開設して好きなことをエントリーに記しているうちに、いろいろな方と知り合いになれる機会があり、たまたまメディアウオッチの記事が注目されて、『メディア・イノベーションの衝撃』という本にコラムを寄稿させて頂いたこと。その後もさまざまな縁があって、いろいろなジャンルで記事や媒体からお話しを頂くことが出来るようになった。(Parsleyのお仕事に関してはこちらをご参照のこと)
 それで現在、複数のネット媒体を中心にひと月あたり60~70本の記事を書くことが主な収入源となっている。月収は、案件によって前後するけれど平均すると約20万円ほどです。
 そんなこんなで。たぶん「ライターになるため」のTIPSについては、イケダ氏よりも知っているという自負があったりします。

 ■「フリーランスライター」のお仕事の実態

 ひとくちに「フリーランスライター」といっても、どんな媒体やテーマでお仕事をするかにより内容も違ってくるし、その難易度も変わってくる。
 今、一番ライターになるのに敷居が低いと思われるのが、iPhoneやAndroidのアプリレビュー。特に後者は媒体が多い上に日々新しいアプリがリリースされるので、どこも恒常的にライターを募集している。Parsleyも『andronavi』『TABLOID』でお仕事させて頂いています。
 もっというならば、通信会社やアプリ開発会社、端末メーカーなど、さまざまな会社が関わっている産業で、成長とイノベーションが日々進んでいる数少ない業界だから、お金が回っている。だから案件が多い。そんなわけでアプリレビューやスマホ端末の使い方などのブログで書いているようなひとならば、比較的ハードルは低くライターになれるはず。
 一方、イケダ氏がフィールドとされているウェブサービス情報はニッチコンテンツ。業界関係者や暇なウォッチャーしか市場がない。市場規模に対してプレイヤーが多いので、当然参入障壁も高くなっている。
 さらに、イケダ氏が想定されているであろうオピニオン系やライフハック的な記事は、それなりに名前が知られているひとでないと発注されないか、もしくはnanapiのように極端に原稿料が安い、または寄稿は出来るけれどお金は貰えないというサイトばかりなので、「ライター」といってもほとんど稼げない、というケースにもなり得る。そんなわけで、そこを目指すのはあんまりおすすめしません。
 さらに、インタビューとなるとさらに案件が少なくなる。これでも私は政治家から一般人までインタビュー記事を書いたことがあるけれど、会って話を聞く時間とそれをまとめる時間と比較して、記事一本あたりのお値段が見あってないことの方が多い。コスパが悪いので、私のようによっぽど好きというひとでない限りはやめておいた方がいいでしょう。
 ちなみに、インタビューの際に録音もせずテープ起こしもしない、という仕事術を梅木雄平氏が記事にしていたけれど(参照)、紙媒体や硬めのウェブ媒体では編集者が記事の前に起こしの提出を求める場合もあるので、お仕事によっては必要になることもあるということを指摘しておきたい。

 ■ライターになるのに文章力や専門知識は必要ない

 月に数十本もの記事を書くために、語彙が豊かであったり文章力があったりする必要はまったくなく、むしろそれが邪魔に働くケースさえある。難しい単語や横文字をむやみに駆使すると、その言葉を知らない読者にとっては何が書いているのか伝わらないし、伝わらないと意味がないので。
 必要なのは、書く媒体のテンプレに沿った記事が書けるか、ということ。例えばニュース記事ならば、最初の段落で要約をまとめ、次の段落で事実関係を列記、さらに事実を補強する情報を列記し、最後の段落で今後の展開に触れて締めるというのが、一般的な形になっている。ここで書く際、筆者の主観は可能な限り排除するべきなので、「思う」とか「感じる」とかで文章を終えるのはNG。そういった細かいお作法に沿う必要がある。
 一方で、ウェブ媒体ならば、ユーザーの共感を得るためにわざとユルい表現を使ったり、2ちゃん用語やネットスラングを織り交ぜたりしつつ書くことが求められたりする場合がある。
 また個人的に政治ネタからカルチャー情報まで、様々なジャンルで書いた経験からすると、専門的な知識はあるに越したことはないけれど、それが必須ということはない。むしろ必要なのは「ググる」能力だと断言できる。ネタになる情報をネット上で拾ってこれるテクニックを身につける方が、時間をかけて専門知識を勉強して蓄えるよりもよほどライターとして生きていくにあたって重要になってくる。そうしないと、幅広い案件を手がけることができないので。
 だから、文書力をつけるための努力というのは自己満足に過ぎません。ブログを書いて勉強するなんてとんでもない。むしろ「自分らしい文章」というものにヘンなこだわりを持ってしまう危険性の方が高いように感じるなー。
 同じように、お仕事のために専門知識を勉強する、というのもおすすめできない。そのジャンルが好きで教養として身につける、というなら有益だと個人的には思うけれど、得た専門知識は既にネット上にいくらでも転がっているケースの方が圧倒的なので、「ググる」力のあるひとが60~90分くらいで調べたものと大して変わらなかったりすることがほとんど。それに、ひとつのテーマだけでライターとしてやっていけるのは各ジャンルで5名もいないので、既に席が埋まっているところに参入しようというのは蛮勇というものだ。

 ■ライターになるために必要なのは「好奇心」

 私は特に特筆すべき学歴も経歴もないし、専門分野もない。特に文章が上手なわけでも、コミュニケーション能力が高いわけでもない。それでも曲りなりにライターとして生きていけているのは、社会や文化全体に関心があるということ。ひとよりも少しだけ、好奇心が強かった。これだけなんじゃないかなぁと思うことがよくある。
 それで、さまざまなジャンルの案件を手がけて、クライアントや媒体、そして読者を満足させるだけのクオリティのある記事を書くのは、取材対象やコンテンツに対する興味関心がないと出来ない。
 多くのライター志望のひとに感じるのは、自分の考えや好きなジャンルについて書いてお仕事を貰うことにより、お金と承認欲求を得たいという動機が先走っているな、ということ。まぁ、好きなことならばブログで自分で書けばいいし、AmazonやGoogleのアフィリエイトで稼げるように頑張ればいいじゃんと思うわけなんですが。「ライター」という肩書きが欲しいならば自分の得意分野だけに特化していては務まらない。遊びではないのだから、いかに自分が出した記事によってできるだけ多くのひとを満たすことが出来るのか、という技術を磨くことが求められるのね。
 たぶん、イケダ氏のエントリーは承認欲求充足願望が強いライター志望のひとには耳障りよく聞こえるのだろうけれど、現実のところお仕事として成り立たせたいのならば、ジャンルとか選んでられない。お仕事を選べるようになるまでにはそれなりに時間がかかるはず。それまでの間に折れてしまう可能性が高いし、現にそういう方をたくさん見てきた。
 だから、世の中全般に興味がある、というひとならば「ライター」というお仕事はさまざまなひとに会えたりいろいろな所に行ったり本や映画などが観れたりするので収入はそれほどでなくてもきっと楽しくお仕事出来るだろう。でも、「これくだらない」と切って捨ててしまうような方の場合、はっきり言って向いていないし稼ぐことも出来ないので目指すのをやめた方が無難です。

 そんなこんなで。ここまで拙文を拝読頂いてそれでも「ライター」になりたい、という方がいらっしゃるのならば。ここでは書けないようなTIPSについてもおはなし出来ると思うので、私宛までメールするなりコーヒーミーティングでアポを頂ければお力になれるかもしれません。需要があるならば、「ほんとうのウェブライターの道」みたいな講座やってもいいけれどな。ないだろうな~。

さいきんのお仕事&取材受けました

★『魔法少女まどか☆マギカ』新房昭之監督にインタビューしました。

 劇場版『魔法少女まどか☆マギカ』新房昭之総監督インタビュー「これはテレビを原作にした映画。スクリーンならではの迫力を楽しんでもらいたいです」(ガジェット通信)

 個人的には、『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』直撃世代なので、お会い出来て光栄でした。
 インタビューでは、主に『まどマギ』世界のデティールについてお聞きしています。2013年には『[新編]/叛逆の物語』の公開が決定しているので、そちらも楽しみです。

 ★『週刊SPA!』の取材受けました。

 『週刊SPA!』11/27発売号の「[普通のおっさんが続々と女装し始めた現象]の謎」という特集に、何の因果か中年の女装男性についての生態サンプルのひとりとして、コメントとコーデ写真(モノクロ)が載りました。
 私は乙女男子なので一歩引いたコメントをしていますが、伝説の女装愛好家キャンディ・ミルキィ氏も取材されていてビビりました(ウェブでも画像上がってます)。興味のある方はぜひ。
 最近、女装男子はメディアからの注目が高いようで、あちこちからお話がやってくるのですが、いちおう「私は乙女男子」と毎回しつこく強調してます(笑)。とはいえ、やっぱ見た目キャッチーな方がいいものね…。

 そんなこんなで、取材したり取材受けたり、身辺騒がしくなっている今日この頃。
 相変わらず節操なくお仕事受け付けておりますので、お気軽にご連絡下さいませ。

「家族」「会社」以外の繋がりを作らないと終わる

リアル30's
リアル30’s

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毎日新聞社
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 毎日新聞の連載企画「リアル30’s」が単行本化された。2012年11月10日には、刊行記念のトークライブが行われて(参照)、Parsleyもお邪魔させて頂いたので、本書やイベントの感想のようなものを記しておきたい。

 本書は、毎日新聞のくらし面に連載された取材記事とツイッターでのやり取り、そして記者の取材記が掲載されている。記事に関しては、NPOを立ち上げ事例という「成功」と、失業者・精神疾患になった例などの「失敗」にフォーカスされて間がないような印象があったが、それを編集部とユーザーとのtwitterでのやり取りが補完されていて、より「リアル」度が高まっている。
 また、各記者の皆様が、当事者である30代の方が多く、ご自身の軌跡を振り返る文を寄せているのも興味深く読んだ。新聞記者というと「勝ち組」というイメージを持ちがちだが、職を得るまでの紆余曲折やお仕事をする上での悩みというものは多かれ少なかれ共通するものがある。それが素直に告白されていて、日々の記事では分からない記者の素顔が垣間見えるというのは、双方向なメディアの時代ではとても大切なことだと感じた。

 類型書として挙げられるであろうシロクマ先生の『ロスジェネ心理学』が30代の過去にさかのぼり心象風景を描いた上でその心理面と処方箋のヒントを詳らかにした一方で、『リアル30’s』は30代が現在直面している問題と、その振る舞いや立ち位置について、どのようにしているのかが明らかになっている。両書とも、30代よりも特に上の世代に読んで貰いたいな、と思う。

 さて。トークイベントでは写真家の青山裕企氏が「人間関係がどんどん広がり、会社で上司と後輩に挟まれ、結婚して親族との付き合いが始まり、身動きが取りづらくなるのが30代だと思う」というコメントをしているのだけれど。Parsleyとしては、狭い人間関係の中で安住しているというのはリスクが高いと考えている。

 私の場合、2004年からブログを書き続けていたおかげで、それまでの毎日とは知り合えなかったであろう方々に知遇を得たり記事の執筆を貰えたおかげで、2010年に広告企画会社を解雇になっても、なんとか食べ繋ぐことができた。もし、自分がブログを書いていなかったら、とっくの昔に社会の隙間へ押し込まれて消えていただろう。
 家族だからといって本当の苦境に陥った時に助けてくれるとは限らない。離れて暮らしている場合は、自分の状況を理解してもらうためこと自体がストレスのかかる作業になる。また、自分が本当に望むことから後退を余儀なくされる場合もあるかもしれない。
 また、「家庭」というのは想像よりも脆くはかない。長い年月に渡ってパートナーでいられるような結婚相手かどうか見極めて選ぶケースはそれほど多くないような印象を受けるし、「日々のすれ違い」といった曖昧な理由でも解消されてしまうものに、過度に頼るのは危険。また、パートナーを解消するために払うコストも低いものではないし、物心両面で疲弊する可能性がある。

 同じように、「会社」も個人を守ってはくれない。正社員といっても労働組合がカバーしている企業の方が一握りでしかないし、「業務のために」と月200時間以上残業したとしても、一度心身を崩した場合は「つかいものにならない人材」とみなされてリストラ対象に成り下がる。
 しかも年齢を重ねるごとに転職するのは難しくなる。専門的な資格もなく、数社を渡り歩いているような「汚れた」経歴だと採用担当者から敬遠され、能力はあっても数ヶ月から1年以上に渡って新しい会社が決まらない、ということもザラにある。これも今の30代が直面している現実だ。

 となると、身内はもちろんだけど、家族や会社以外での「横」の繋がりを積極的に作っていかないと、自分自身が困った時に詰んで身動きが取れなく可能性が非常に高い。
 そのように「終わる」前にすべきこと。会社での業務や、家事をするリソースのうち少しずつでいいから、自分のやりたいことや趣味の時間を作っていくこと、それにより人間関係を多重にしていくことだとParsleyは考える。
 幸い、今はSNSなどで自分の趣味志向と近いひとと繋がるのに払うコストは以前よりも低いし、自分の考えをブログにまとめたり、Youtubeやニコニコ動画に投稿したり、様々なプラットフォームを使うことで自分を表現することができる。そこから新たなひととの繋がりが出来るための「道具」は揃っている。
 また、社会と繋がりを持つために、自治体やNPOなどが開催するフォーラムやイベントも増えている。同じ職種や異業種の交流会も探せばたくさん実施されているはず。そういう場に積極的に参加して、家族や会社とは違ったネットワークを作っていくと、有事の際に物心両面で支えになるし、なにより人生が豊かになると思う。

 そう考えると、一番ヤバいのは、「やりたいことがない」というひとや、「人間関係がめんどくさい」というひと。
 漫然と生きていけるのは僥倖に過ぎず、個々が何らかの努力をしたわけではないということに気付けないと、孤独死という最悪の結末にも現実味を帯びてくる。そうならないためにも、自分から興味のあることにはどんどん首を突っ込んで生きていった方がよっぽど安全だし楽しいよ。それくらいひととひとの繋がりって大切だ。

 閉塞感に潰されがちなのは何も30代には限らないと思うけれど、個人が孤立しがちだからこそ、「家族」「会社」「学校」といった組織単位ではない、一対一の人間関係を築いていくことが重要になっている。そうすれば、どこかの組織からこぼれ落とされたとしても、何とか生きていくことは出来るから、今ある人間関係だけが全てだとは思わずに、貪欲に他者の輪に入っていくことが求められているのだと再認識させられた次第です。