「ハレ」を拡張するソーシャルメディア×音楽

 第38回:音楽を日常の国にするために必要なこと(ドリルスピン)

 高野修平氏の記事を一読して、「すごく真面目に音楽盛り上げたいという意気込みは伝わってくるのだけれど、なんかイケてないなぁ」と感じたので、理由をつらつらと考えてみた。

 まず、「音楽を日常に」という前提はどうなのだろう。
 ソニーが1979年にウォークマンを発売してから、音楽は家やライブ会場だけでなく、いつでもどこでも聴けるコンテンツになった。加えて、テレビやラジオで曲を耳にする機会は多いし、コンビニで有線が掛かって気になることだってあるはずだ。
 「No Life, No Music」は多くのひとにとって実現している。むしろ、選択肢が多すぎるくらい音楽は氾濫している。つまり、私たちは日常的に音楽をシャワーのように浴びている状態なのだ。
 それで。「リスナーが主語」といいつつ、「音楽を聴くデバイスに興味を持ち、音楽を聴くヘッドフォンやイヤホンにこだわり、音楽が鳴る音響機器に価値を感じ、ライブやフェスに毎年のように、訪れる人を増やし、仕事帰りに当たり前に居酒屋に行くのではなく、ライブハウスに行く」って音楽ビジネス関係者にとっての都合のいい「リスナー」に過ぎない。お金を落としてくれる「意識的に音楽を聴く人たち」だけが「音楽ファン」というのはあまりに狭量だし、若年層のリスナーを切り捨ててもいる。

 そういった感覚でいると、記事で紹介されている『JAMBORiii STATION』も、「…微妙」といわざるをえない。
 10代のリスナーって、音楽の最初の接点がニコニコ動画で、最初からtwitterのアカウントを使いこなしているという層。だから、拍手の代わりに「888888」といったテキスト表現に慣れている。他にも、「♪」「☆」といった記号や顔文字などを多用している場合が多い。で、『JAMBORiii STATION』で実装されている「エモーション」って絵文字だという認識なんだけれど、最近の子は絵文字をあまり使っていなかったりする。もっというとガラケーやブログ初期に流行った表現なんだよね。
 他にも、レコメンドはニコニコ生放送でも商品リンク張れるし(ユーザーが勝手に加えることもできる)、新規性がどこにあるのか分からない。結局はどのアーティストのライブに使われるか、というコンテンツ次第ということになってしまいそうだ。

 それで。特別な時間という「ハレ」は、いかに「日常」から切り離された「非日常」になれるのか、ということなんじゃないか、と思うんだよね。いかにユーザーにとっても、アーティストにとっても、特別なお祭りとなる時間になるか。
 そういう意味では、ボーカロイドやアニソンを中心としたクラブイベントは、東京から全国へと広がりつつあるし、あるイベントに向けてDJさんは「頑張ってセットリスト組もう」としているし、ユーザーも「○日のイベントに向けて頑張って仕事しよう」というモチベーションになっているのではないだろうか。
 そこにソーシャルメディア、特にニコニコ生放送とtwitterが絡むと会場に来れなかったユーザーもその模様が体感できて、次のイベントへの行動の喚起につながっていく。そのような、イベントを中心とした循環をリスナーやアーティストたちの歳時記に組み込んでいけるのか。これが今、音楽カルチャーの最前線で進んでいることのように思える。

 とにかく。「お金を落としてくれるのがいいリスナー」という視点ではこれまでの音楽ビジネスと何ら変わりがない。いかにアーティストとリスナーとの距離を短くして、一緒に一つのイベントを盛り上げていくのか。その熱量から、どのようなマネタイズが可能なのか。さらにはリスナーとクリエイターとの距離が限りなくゼロになった今だからこそ、可能になったビジネスもあるはずなので、そういったことに知恵を絞ってもらいたいなぁ、と思う次第です。

 とりあえず、高野氏はもし行かれたことがないようならば、ニコファーレの音楽イベントに足を運ばれることをおすすめする。とにかく会場の雰囲気と三面スクリーンに映し出されるリアルタイムのコメントに圧倒されるから。あの熱量を見たら、音楽カルチャーの今後に不安なんて微塵もないって感じられるはずだ。 

音楽の明日を鳴らす~ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネスマーケティング新時代~
高野修平
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ネットは紙よりクオリティが求められる

 Webのキュレーションに価値はあるのか–編集者・菅付雅信さんが語る(東京編集キュレーターズ)

 編集者の菅付雅信氏と、数々のメディアを仕掛けた田端信太郎氏のトークセッションはとても刺激的だったのだけれど、Parsleyとは認識が180度違うな、ということがあったので、メモ代わりに。

菅付 ウェブは誰でも参入できる。プロの比重の問題で、どちらかというと紙はプロが多い分、クオリティが高い。ウェブはアマチュアの比重が高い。
田端 ところでクオリティとは何でしょうか。
菅付 「ウェルメイド」と「ウェルコンシダード」。つまり、よくできていることと、よく考慮されていること。それがあわさったものがクオリティです。
田端 紙がウェルコンシダードなのは、紙は印刷してしまったら直しがきかないからではないでしょうか。一方でウェブは直せる。だからウェブはウェルコンシダードの必要がない。よくも悪くもウェブは甘いとも言えそうですが。
菅付 終わりがない良さがあるし、ばしっと終わる気持ちよさもある。それはケースバイケースだと思います。

 「紙は直しが利かなくてウェブが直せる」というけれど、ウェブメディアでお仕事させて頂いている身からすると、一度情報をアップすると瞬時に情報が拡散していくから、直しが利かないのはむしろウェブの方だ。あとから消したり修正したりしても、一度流した情報はキャッシュが残るし、読んだユーザーが訂正した情報を見るとは限らない。
 私の経験では、PR会社の担当者さんや広報さんは紙の時よりもチェックが甘いことが多い。それで、アップされた後にクライアントから依頼がきて修正、というケースがあるんだけれど、はっきり言ってウェブとユーザーを舐めているよな、と思う。一度流れた記事は各媒体に転載されたりして拡散していくし、それを全部消してまわるのは事実上不可能だ。それで、せっかくユーザーに広がった情報がつまらない理由で修正されると、「なぜ?」という疑念が広がってネガティブな反応を引き起こしてしまう場合もある。
 だから、むしろネットこそ「直しが利かないメディア」であるし、より正確に情報を伝えたいのであれば、紙媒体以上に厳しくチェックしないといけない。だから、メディア関係者はもちろん、広報やPRの担当者で、「いいや後から直せば」と考えている方がいらっしゃるとすれば、認識改めたほうがいいと思うな。

 あと。ネットと紙では、「よくできていること」「よく考えられていること」の内容がだいぶ違う。
 同じ情報を出すにしても、紙の場合は、きっちりとした文語体にすることが「よくできている」最低限のラインだし、その記事が配置されるページ数によってもより適切な表現がある。けれど、ネットだとあえてユルい表現にしたり、突っ込まれる隙を作ったりして、ユーザーの反応を喚起することが求められる。つまり、「きっちりと書く」ことは、「よくできていること」にならないことも多い。
 また、「よく考えられている」というのは、一読して「すごい!」と思わせるところで終わりがちな紙媒体の記事と違い、ネットの場合はリンクを張りつつメディアとしての影響力(もっというとPV)を最大化させ、情報がユーザーに届くまでの流れを設計して、さらにユーザーに行動(特に購買)を喚起する。そこまで出来て「よく考えられている」記事あるいはメディアということになるだろう。

 ユーザーとの距離が近い分、ネットは紙媒体などよりもクオリティが求められる。いい加減なコンテンツだと読者はつかないし、情報の出し方を考え抜かないとなかなか読者に響かない。
 そして、記事の書き方も紙とウェブとでは適切な表現が違っている。また情報の散りばめ方とかにも細心の注意が要る。ほんとうに、紙では適当に済ませたり考慮にいれないで済んでいたことが許されないから。紙出身の方って、このあたり舐めている気がするんですよね。

 こう考えると、つくづくウェブで書き物のお仕事をするのって、割りに合わないお仕事だなーって思うのだけれど。でも、すごいクリエイティブなことをしているという充実感は得られるので、Parsleyはウェブで記事書くの楽しいしこれからも精進していこう、って思っています。

『ケイクス』に見る有料コンテンツの現在地

 『スタバではグランデを買え!』『もしドラ』など、ダイヤモンド社で数々のベストセラーを手がけた加藤貞顕氏が立ち上げた『cakes(ケイクス)』が9月11日についにオープンした。
 『ケイクス』は週150円でコンテンツが読み放題になるという有料配信プラットフォーム。個人の有料メルマガではなく、サイト自体を有料課金にして多くの書き手の記事が読めるというモデルは、これまでありそうでなかった。そこに目をつけたあたり、単純にスゴイなぁと思う。
 
 執筆陣は、下記の通り。

 青木理音、青山裕企、安全ちゃん、飯田和敏、家入一真、いしたにまさき、磯崎哲也、伊藤聡、宇都宮徹壱、海猫沢めろん、大崎善生、大槻ケンヂ、大山くまお、岡田育、岡田斗司夫、久保内信行、小田嶋隆、陰山英男、加藤レイズナ、金子平民、川上慎市郎、黒田勇樹、古賀史健、ココロ社、近藤正高、西條剛央、坂上秋成、坂口孝則、坂之上洋子、真実一郎、橘玲、田端信太郎、塚越健司、津田大介、ツレヅレハナコ、仲田晃司、西内啓、二村ヒトシ、古川健介、能町みね子、馬田草織、ハマザキカク、速水健朗、美少女図鑑、pha、finalvent、フェルディナント・ヤマグチ、深町秋生、藤沢数希、藤田大輔、藤野英人、本田透、枡野浩一、真魚八重子、三田紀房、峰なゆか、May_Roma、茂木健一郎、山形浩生、山本一郎、yomoyomo

 ざっと見たところ、加藤氏が編集者として携わっていた書き手プラス、2005~2007年くらいにはてなダイアリーを中心としたブロゴスフィアで活躍していた書き手が多い、という印象。ジャンルやカラーは多岐に渡ることは容易に想像がつくし、「文化系トークラジオLife」を欠かさず聴く層や日経ビジネスオンラインを毎日読んでいますという層ならば、週150円/月600円なら払って読む価値があるだろう。
 なかでも唸ったのは川上慎市郎氏の名前があったこと。もう忘れちゃっている方もいるかもしれないけれど、彼はブログ『R30』の中のひと。ビジネス・マーケティング・メディアに関する鋭い論考と見も蓋もないぶっちゃけ内容で一世を風靡した彼は、グロービスでマーケティングを中心に教鞭を取っている。(参照
 しばらくネットとは距離を置いていた『R30』様がどんな記事を送り出すのか。個人的にはこれだけでも150円出して読みたいと思わせる方だ。
 ほかにも、素敵な写真とエッセイをお書きになる『平民新聞』の金子平民氏やサラリーマン本・マンガ評やアイドル評に鋭い『インサイター』の真実一郎氏、海外ウェブの先端に詳しく大手小町のヘビーウォッチャーでもあるyomoyomo氏など、決してメジャーではないかもしれないけれど、実力もありファンも着いている書き手が揃っている。「これは!」と思わせる書き手をこれだけ揃えたあたりが、メディアプランナーとしての加藤氏の力技だろう。

 そんなわけで。先述したように2005~2007年前後にブロゴスフィアにいて、はてなダイアリーあたりで書いていたひとにもフォーカスされているわけで、彼らのブログをRSSに入れていたという相当数の読者は『ケイクス』に付いてくるだろう。なので、成功は確実というか、まぁ失敗はないよね、という手堅いビジネスをしているあたりも、加藤氏が編集者としてだけでなくメディアプロデューサーとしても鬼才たるゆえんだな、というのが個人的な感想になる。
 サイトのUIはhtml5を駆使してタブレット端末で見られることを想定されていて、ぱっと見新しいようだけどやっぱり押さえるべきところは押さえていて、緻密に考えられたデザインで、こちらも定石は外していない。
 さらに、各提携メディアの記事掲載などで、『ケイクス』ブランドで書き手を送り出すことが出来れば、単なるプラットホームとしてだけでなく、編集プロダクション的な振る舞いも出来る。
 見れば見るほど、加藤氏の凄腕ぶりに唸るしかない。

 だけど。全体として、手堅い故に面白みはないなぁ、とも思ってしまうんだよなぁ。

 何度もいうけれど、『ケイクス』が失敗する可能性はほとんどない。読者層が明確に想定されているからだ。もっというと、ネットリテラシーのある20代後半から40代男性がメインターゲット。仮に5万人有料購読者を獲得したら、単純計算で月三千万円。5万という数字は、コンビニエンスストアに入る雑誌の最低発行部数に近く、バリューとしてはそれほど難しいラインではないのではないだろうか。
 とはいえ。それまでホームラン級のベストセラーを連発していた編集者だった彼にしては、急にセーフティーバントでのヒットを狙ってきたようで、ちょっと小粒な印象を受けてしまう。
 この面白みのなさを簡単に言うと、おじさんのメディアになってしまう可能性が非常に高いこと、なんじゃないかなぁと思う。10代から20代前半の読者がつくイメージが沸かないというか。そもそもオンライン決済はクレジットカード所持が前提になっているので、若い子は読むに読めない。インタビューで加藤氏は「田舎の中学でイジけていた自分」が想定読者とおしゃっているけれど(参照)、現状の『ケイクス』が<彼>に魅力的に見えるのだろうか?
 ある意味、『ケイクス』はブロゴスフィアの書き手にちゃんとした対価を払えるモデルを作ろうという、書き手側の方を向いたモデル。それはとても大事だし応援したいのだけれど、同時に読み手側を見たモデルではないよな、と思わざるをえない。

 実のところ、有料メルマガや最近オープンしたニコニコ動画の『ブロマガ』にしても、若い読者を想定していない、というのがコンテンツビジネス最大の問題だということを浮き彫りにしていると思う。書き手はおっさんばかりだし、ネタは週刊誌っぽいし。そして、先述したようにそもそもとしてクレカ持ってないと読めないという時点で高校生以下はほぼオミットされてしまう。
 単純な話、テキストなんて暇でもてない男性諸君が最大のバリューゾーン。そこを狙えないメディアは、読者の年齢が上がるとともに先細りするだけだ。
 そして、今10代や20代前半はコンテンツの受け手としてだけでなく、ニコ生やpixivなどで送り手としても活躍している。その上で自分が何かを出す、という快楽は求めても、「お金をもらう」ということを必ずしも求めていない、というあたりがポイントなのではないか。
 ここのあたり、コンテンツビジネスの現状の難しさと、今後の可能性が潜んでいるように、個人的には感じているのだけど。話が逸れすぎたので別の機会に考えることにする。
 
 そんなわけで、『ケイクス』はまぁ成功は確実だし、有料課金コンテンツのビジネスモデルとして一つの形が出来ることによって今後の展望が開けるかもしれないと期待はしたいのだけど、もうちょっと大きなラインを狙ってほしかったなぁ、というのが個人的な感想になる。

 とはいえ、加藤氏が現状で満足しているとはとても思えない。彼のさらなる一手を注視していきたい。
 その一手が、Parsleyを書き手もしくは編集側として入れてくれる、というのだといいのですけれどね(笑)。

 

さいきんのお仕事

『RISEOZART』創刊準備号でお仕事しました。

 東京・中野のカフェブックダイナー「オメガアルゲア」が出版した雑誌、『RISEOZART』の創刊準備号でお手伝いさせて頂きました。
 ほぼまるまる一冊がイラストレーター宇野亜喜良氏の特集。私自身も宇野氏の舞台衣装を合わせる現場やインタビューなどをさせて頂いて、むちゃくちゃ緊張したと同時に貴重な経験をさせて頂きました。

 こちら、一般の書店では扱いがないので、購入されたい方は通販サイトにて。
 

『ガジェット通信』『オタ女』でお仕事させて頂いています。

 週数本は書かせて頂いているのですが、中でも今回、武蔵小杉駅のポスターを巡って取材&記事を担当させて頂いた一本がお気に入りです。

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 『オタ女』はだいぶいろいろな方に読まれるようになってきて、初期から関わっている者として嬉しいです。これからもふり幅広くネタを提供していけるようにしていきたいと考えております。

 

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