『Enigmarelle -亡骸への焦燥-』を観てきた。

 初台にある画廊・珈琲Zaroffは、澁澤龍彦や寺山修司が好きという方や、西洋美術・写真に関心がある方は、注目しておいて損はないスポット。毎回店主のキュレーションが秀逸で「ここでしか観れない」という展示を多く開催している。また、ココアがいくつもの種類を取り揃えているカフェは、東京広しといえどもここぐらいなのではないだろうか。

 そんなZaroffで、剥製とガスマスクと人形をコラボした展示をする、という情報を耳にして、前から気になっていた。革工芸の三上鳩広女史、剥製展示のヒキムスビ女史、人形作家の萌女史と、いずれも20代の女性作家の手になるというところも、興味を深くした。
 ということで、展示初日の8月25日に足を運んでみることにした。
 
 2Fに入ると、視界にではなく、革特有の匂いと、わずかな薬品の匂いに意識が奪われる。次の瞬間、目に飛び込んできたのが、四肢を切断された人形に、顔と左足が革で覆われた作品。タイトルに「亡骸」とあるだけに、生気のなさ、無機質な印章を与える人形を、革で一部分を隠すことにより、「物語」が付加されている。

 繊細に配置された展示の中で、部屋を圧倒する存在感を放っていたのが、二人分の頭が入るように作られたガスマスク。実際に女の子二人が着用した写真もあったのだが、擬似的なシャム双生児になれる素敵なプロダクト。そして、吸入口に詰められた植物のおかげで、余計に異形のものへと誘っているように感じられた。
 また、奥に飾られていた、草花が苔のようにこびりついているマスクも印象的で、ちょっと被ってみたかった。

 ヒキムスビ女史の剥製は兎や鼠で、真っ白な毛並みなのが、夢のようで、幻想的。だが、彼らに込められた「毒」は強い。特に、右側から見ると何の変哲もないのだが左側に回るとむきだしの骨が露になっている子と、箱の中に収められていて、目や首の辺りや後ろ足の腰の位置に歯車が埋め込まれ、周囲に残骸が散らばっている子が、「モダンな悪夢」を覚えて、この子たちが現在の状態になるまでの過程が逆巻きにフラッシュバックするような、そんなイメージを抱かせる作品たちだった。

 今回は所要の関係で1時間弱の滞在だった。会場にはソファーがあって、ゆっくりと作品たちと対話の時間を楽しむことができる。会期は30日まで。もう一度、彼らに会いに行くのもいいかもしれない。

『東電帝国 その失敗の本質』を読んだ。

東電帝国―その失敗の本質 (文春新書)
志村 嘉一郎
文藝春秋
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 献本頂きました。ありがとうございます。

 本書の著者である志村嘉一郎氏は、第一次石油危機の直前に朝日新聞経済部電力担当記者だったという経歴の持ち主。退社後も電力中央研究所顧問などを歴任するなど、電力業界の人脈が深く、東京電力の事情に知悉した人物だ。その彼が、『経済団体連合会三十年史』など約三十冊の書籍や電力業界誌『電力新報』(現『月刊エネルギーフォーラム』)のバックナンバーなどより生ネタを扱い、1951年に九電力体制になった経緯から東日本大震災で福島第一原発の事故が起こるまでの変遷を描いたものだ。

 本書を読むと、今回の福島原発の事故は、戦後に構築されたシステムの制度疲労と、その延命を試みてきた結果が「失敗の本質」にあると理解できる。
 特に、東電が政界への工作ための献金の話や、経産省の官僚の人事にも影響力を得るために、自社や電力業界団体への天下りを受け入れてきた構造、そして、マスメディアを味方につけ原子力の安全性をアピールしていくまでの手管など、60~70年代には既に強固な基盤が出来ていたことが明らかにされるのは圧巻だ。

 第二章「朝日が原発賛成に転向した日」には、当時の木川田一隆東電社長が電力事業連合会の広報担当理事をマスコミから引き抜き、原発一基分にあたる3000億円ものPR関係費を原発建設費の一部として認め、まず朝日新聞に記事広告を掲載、その後他紙もその流れになびいていくまでの様子が活写されている。
 3.11時、勝俣恒久東電会長は中国を訪問中だった。本書によるとこのグループは毎年中国に行っており、2009年10月の訪問者の中には、電力関係者だけでなく、労働組合OBや新聞社・出版社の主筆・編集長クラス、大学教授などが名を連ねている。著者は「旅費がどうなっているのか、(参考にした)印刷物には書いていない」とあるが、その代わりに、自身が勉強会に名を連ねている時に、海外旅行に行く話になり、東電副社長から「旅費なら出してあげますよ」と言われたエピソードを加えている。

 また、コストカットにより原発が耐用年数を過ぎても稼動させられるに至った経緯や、各部署間の行き来の少ない風通しの悪い組織、そして都合の悪い情報を潰してきたからくりなど、GNPの1%近くになる5兆円企業が砂上の楼閣であることを次々と明らかにされている。

 震災による福島原発の事故は、東電の体質が原因により今も実態が詳らかになったとはいえないし、大手マスメディアの報道が切れ味に欠けるのもこうしたPR広告費をたっぷりと浴びていたことの影響が少なからずあるだろう。政治家や官僚でも電力会社の代弁者に事欠かず、もしかして今も我々の知らないところでロビー活動を繰り広げているのかもしれない。

 繰り返しになるが、これは何も東電一社の問題ではなく、戦後から60年以上続くシステムの制度疲労が真に問題とされるべきことだろう。そういった、「戦後の呪縛」から逃れない限りにおいては、「復興」の掛け声もむなしく響くだけなのではないか。
 いまのところ、そのような広い視座で国のグランドデザインを変えようという機運は見えず、政局に汲々としている有様を見ると暗澹たる気分になってしまうけれど、もしこの状況を乗り越えようとするならば、避けて通れない問題のはずだ。
 そう本書を読んで、確信するに至った次第です。

『PS』9月号を読んだ。

 『PS』が12月号(11月1日発売)で休刊になるという話(参照)、このブログをはじめてからずっと追ってきたParsleyとしても残念だけれど、数々の予兆みたいなものは感じていた。
 しかし、公式サイト『モバPS』をリニューアルしたばかりだというのに休刊というのは、出版社の経営がてきとうになされている証左でもあるなぁ。
 まぁ、このあたりの事情は別のエントリーで詳しく考察してみようと思うのですが…。

 弱り目に祟り目というか、なぜAmazonの画像ないの? …と思ったら、表紙が嵐の櫻井翔&宮崎あおいで、ジャニーズコードに引っかかっちゃったのね…。
 ちなみに、公式サイトでは、下記のように、櫻井くんのところを灰色に隠して対応している。

 中グラビアは、映画『神様のカルテ』とのコラボで、インタビューなども掲載しているのだけど、二人ともコーデが抜群にいいんですよ。早くも秋を先取りしたニットの着こなしは参考になるはず。それだけに、ジャニーズコードが…。

 注目したいのは、早見あかりが32Pに登場、清楚な水玉ワンピース姿を披露しているところと、108Pにシンケンレッド&ラインハルトこと松坂桃李が読書について語っているところかな。
 あと、中綴じで、モデル・女優の水原希子が「話題のITガール」として特集されている。これまでそれほど『PS』で取り上げられていた記憶がなかったし、やや雑誌のカラーとも違うから唐突な印象を受けた。

 あとは、42・43Pのショートパンツの紹介で「少女時代ばりに着こなす」「世の中全体が開放的な8月こそ、思いきった肌見せに挑戦セヨ!」とあるのが、若干恥ずかしかったかな、個人的に。
 それよりも、マキシTシャツワンピを紹介している38・39Pの方が、はるかに『PS』らしく安心できる。

 他にも、アウトドア女子特集やカップル特集(久々にSEXネタも)があり、いい意味でごった煮感のある誌面づくりだった。

 それにしても。ジャニーズコード…。

 

6%DOKIDOKIヴィジュアルショーの先進性

 7月29日に開催された、ASOBISYSTEM4周年記念『HARAJUKU KAWAii!!』にご招待頂いたので、お邪魔してきた。
 様々なファッションショーやアーティストのライブなどがある中、とりわけ異彩を放っていたのが、増田セバスチャン氏率いる6%DOKIDOKIのヴィジュアルショー。それまでYouTubeでは観たことはあったけれど、生で観るのははじめてで、個人的にはかなり衝撃を受けた。

 やや無機質な印象を与える音楽が浩々と鳴り響く中、突然、ステージより猛スピードで2匹(?)のウサギのラジコンが登場。一匹は早々にウォーキングゾーンから落下。もう一匹もうなるような挙動を繰り返して、やはり落下した。
 その後、ショップガールのvaniさんが登場。赤をベースにしながらも黒系のアイテムを織り交ぜたコーディネートで、舞台狭しと躍動する。その動きの凛々しさに、思わず「あっ」と声を上げてしまった程、素晴らしい「舞」だった。
 その後、同じくショップガールのユカさんが、ピンクとイエローを基調とした、ロクパーならではのコーデで登場。こちらは華麗な足取りと観客側を意識した手の動きで、会場を魅了する。
 そして、透明なウサギ(?)のかぶりものをした世界から集まったドキドキカーズが、一列に並んで機械的かつ直線的に、舞台を寸断する。その中でもショップガールの二人は、特に意識することもなく、歩みを進めていく。
 刹那、白いかぶりものが現れ、ウォーキングゾーンまで疾走。彼(?)を中心にドキドキカーズが集まり、何事か楽しそうに囁きあい、舞台右手の袖に消えていく。
 
 …と、時系列に起きたことを羅列してみたけれど、言葉では全然伝えきれない。
 とにかく、ファッションショーの枠組みを超え、しかし「演劇」とも違うパフォーマンスは、観るものを揺さぶる何かは確実に存在していた。それまでは、歓声一色だった会場が、ロクドキの時間だけ、一瞬ざわざわとし、終了時にはじめて満場の拍手が自然と沸き起こったのが、何よりの証拠だと思う。
 拍手をしながら、仕掛け人の増田氏が目指したものは、たぶん「カワイイ」という言葉の更新なのではないか、と私はぼんやりと考えた。「ふにゃり」とした印象のある「カワイイ」に、一本の筋を通す作業、と表現すればいいだろうか。美しいだけでもなく、かっこいいだけでもなく、内面にある「意思」こそがスタイリッシュ。それを体現したのが、vaniさんであり、ユカさんだったのではないだろうか?

 このビジュアルショーに関しては、今後のファッションシーンを変える力があるようにも思えるし、音楽や演劇といった、他ジャンルにも影響を与えうる存在になる可能性を秘めているようにも感じる。
 実際、別のステージでは、『KERA!』で活躍中のモデルの街子さんが、ほかのモデルさんとは明らかに一線を画したダイナミックなパフォーマンスを披露していた。これから、ファッションショーの枠組みを超えた形で、自由な表現が生まれる場として、ファッションショーが機能していく、そんな可能性の萌芽が見えたステージだった。

 この日は、他にもHALCALIが10代の子たちに受け入れられて胸熱だったり、きゃりーぱみゅぱみゅが『PONPONPON』を初めてライブで披露するのが初々しかったり、capsuleのステージで『MORE!MORE!MORE!』⇒『Starry Sky』⇒『JUMPER』⇒『WORLD OF FANTASY』⇒『グライダー』の繋ぎが中田ヤスタカの神がかり的な展開だったことなどなど、とにかく盛りだくさんの内容でとても楽しかった!!