画家の詩心と、作家の絵心

ふりむく (講談社文庫)
ふりむく (講談社文庫)

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江國 香織
講談社 (2010-09-15)
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なくしたものたちの国
なくしたものたちの国

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角田 光代
ホーム社
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 二冊とも献本頂きました。ありがとうございます。

 つくづく不思議な絵だ、と松尾たいこ女史の作品を観て、そう感じる。描かれているものだけでなく、描かれていないものについてがどうしても気になってくる。鮮やかな背景の色には、何が「ある」のだろう? アンリ・ルソーの作品を観賞して感じる気持ちにちょっと似ているかもしれないな、とふと思ってみたりする。
 これは、小説を読む時の、「行間を読む感覚」に近い。パステルカラーの壁や鮮やかな背景、一見すると、何も描かれていないただの「白」でさえ、明確な意味が込められている。それを感じ取ろうとするのは、とても楽しい時間だ。
 たぶん、彼女の作品は、何かが意図的な欠落がある。その欠落こそが、彼女の詩心の結晶なのではないかと、Parsleyは思ってみたりするのだけれど。

 対して、江國香織先生にしても角田光代先生にしても、当代でも随一の「絵心」を持つ小説家と言っていいだろう。両先生とも絵本への造詣が深いことは言うまでもないことだろう。江國先生『絵本を抱えて部屋のすみへ』は大好きだし、角田先生も『いとしさの王国へ』に印象的な小編を寄せているし、インクヴァンパイアシリーズの翻訳もされている。「絵」というものに、とても敏感なことは周知のことだろう。江國先生は、自身の創作を『ふりむく』のあとがきで『物語を「見る」』と表現している。

 『ふりむく』では、36Pの一篇が特に好きになった。「あたしはCDプレーヤーしか持ってないけど、でもレコードを借りられてうれしい。」。パーカーを被った少女が手すりに座っている。暖色の色使いに白地に水玉の傘が鮮やかさが映える。絵と文が、不思議だけど絶妙な距離感を保っている。

 『なくしたものたちの国』は、逆に絵と物語が寄り添っている印象を覚える。松尾女史の絵はどこにでもあるようでどこにもない風景や人を描いているように感じるし、角田先生はなくした「もの」や「記憶」を、さざなみのように何度も登場させて読者を幻惑の世界へと誘う。もしかしたら、私たちの世界は、私たちが考えているよりもあやふやなものなんだろう、とふと思いながら、ページをめくることになるだろう。

 画家の詩心と作家の絵心。その両者が互いに想像しあうことによって生まれた作品は、これまでに食べたことのない、極上のクッキーの味がするような気になって、すごく幸せな気持ちになった。
 そして、たぶん、そういう感覚を覚えることって、とても貴重な時間なんだと思う。

 

大臣会見オープン化と情報公開

 民主党代表選も終わり、政局の季節も猛暑と一緒に去るのかどうかは分からないけれど、ひとまず菅直人氏が首相再選され、改造内閣が誕生した。ここで問題になるのが、大臣会見の行方だ。
 昨年の鳩山内閣誕生時に岡田前外務大臣が端を発したオープン化の流れがどうなるのか。岡田氏はオープン化に積極的だが、後任の前原誠司氏は国交相任期中最後までフリーランスに門戸を開かなかった、と聞いている(オブザーバー参加者も質問可能との情報もあるが)。いずれにしても、各大臣の動向は注視しなければならないだろう。
 と、いっても、私は結構楽観的に考えている。これまでいろいろなところに探りを入れる限り、政治家、各省庁職員、記者クラブ加盟社、その全てが「慣例に従っている」という以外にオープン化を阻む理由を見出せていないから。一度開いた門戸を再び閉めるのも「めんどくさい」んじゃないかしらん、と推測する。

 しかし、呪縛のようにように残るのが、昨年9月に外務省が制定したルールだ。各報道協会加盟社と、加盟社の媒体への寄稿歴がある者に限られる、という線引きは、その後多くの省庁が採用してしまった。ちなみに外務省はその後「アクセスパス」を導入し、より多くのフリーランスも会見に参加出来るようになったのだが(参照)、その対応を踏襲した省庁は現れなかった。

 また、浅利圭一郎氏のツイートによると、今回の菅首相会見の「オープン化」は次のような条件があるのだという。

  1. 浅利圭一郎
    keiichiroasari 首相記者会見の非クラブメディア&フリーランスの事前登録、身分証の他、専門新聞協会・雑誌協会・インターネット報道協会・新聞協会の加盟社に限る媒体で、直近3カ月以内に、各月満遍なく1つ以上、しかも総理・官邸などに関する記事に限る。しかも、記事掲載加盟社の推薦状の添付を求められる。
  2. 浅利圭一郎
    keiichiroasari これまでに職務経歴書の提出も求められた。「記事に関しては、現時点で入れている人でも、厳密に総理・官邸がらみの内容でなくとも通っているようですが?」と向けると、それは「記事を見て判断している」と曖昧な基準であることを暗に認める。改めて、官邸と複数省庁は、オープン化とはほど遠い現状。

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 それに。間違えてはいけないのは、報道関係者全てに「フルオープン」化が実現したとしても、それは「フル」ではない、ということだ。
 2010年になり、マスメディアとミドルメディア、そしてブログ・twitterなどのソーシャルメディアとの境界線は曖昧なものになっており、今後その線引きは徐々に溶解していくことは間違いないだろう。そんな中、「報道関係者」だけに参加を限るのは、時勢にそぐわない。
 例えば長野県では、知事会見を一般にも開放しており、特別問題が起きたという話も聞かない。情報公開という側面から考えても、公官庁の会見は一般市民にも全てオープンであるのが理想だろう。

 このように書くと、「セキュリティチェックはどうするのか」とか「担当外の質問に長時間取られるのでは」とか「重要情報(金融関連等)に影響を与えることになるのでは」といった懸念点がいくつも提示されるだろうが、twitterに代表されるソーシャルメディアやUSTREAMやニコニコ生放送のようなライブメディアで誰でも「中継」が出来るようになった現在、誤報や恣意的な情報は数分単位で正されるようになっている。むしろ、報道関係者の手によって、情報が「編集」されていることにより、生の情報とは別のものになっている事例の方が多いことからも、真の意味での「オープン化」されることが必須だと言っていい。

 個人的には、「オープン・ガバメント」を推進している経済産業省、そして、民主党政権になってから国家戦略の柱に位置づけられた「新しい公共」に関して、どこまで官庁が「開かれる」のかについて注目している。どちらも市民の能動的な参加が前提になっていることからも考えて、トップである大臣会見が市民に対してクローズだというのはつじつまが合わなくないか、と思う。
 私自身、担当大臣の大畠章宏経産相と玄葉光一郎国家戦略担当相の会見には是非とも出席してみたい。
 ちなみに、現状では経産省は記者クラブ幹事社の許可を得た後広報室に連絡というフロー、内閣府は大臣によって対応が異なる模様…。さてさて…。

『メルヘン』ライナーノーツ、みたいなもの

メルヘン
メルヘン

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フレネシ
乙女音楽研究社 (2010-09-15)
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 9月15日に発売されたシンガーソングライティングアニメーター・フレネシ女史の最新作『メルヘン』の帯に、不肖Parsleyことふじいりょうがコメントを寄せさせて頂きました。実物を観たけれど、嬉しい以上になんだか恥ずかしくてむずかゆい感じですね…。この場を借りて、だいじなお役目を任せて頂いたことを改めて感謝。ありがとうございました。

 彼女の音楽の魅力は、「8歳でささやき声しか出なくなる」という声が持つ少女性、揺らぎ移ろいつつ芯はしっかり存在する詩の乙女性、そして、時にキッチュでファニー、時にしっとり叙情的な旋律、この三つが挙げられるだろう。加えて、「アニメーター」としての作品のぶっとび具合! 想像力がとにかく凄い。
 そのあたりは、前作『キュプラ』収録、『メルヘン』にも中国語バージョンがある『覆面捜査員』のPVをご覧頂ければ、体感できると思う。

 そして、『キュプラ』から一年を経てリリースされた『メルヘン』は、よりぶっ飛ぶ方向に引っ張られているというか、少女・乙女の持つ想像力のリミットを外してみたらこうなりました、という大変な作品に仕上がっている。私の言葉を使えば「孵化」したということになるが、彼女のめくるめく世界は、不思議で自由で、そして愛おしい。

 例えば、「イフレーション2」の詩の締めくくりに「ああ どうして あなたは 東京タワーより せがひくいの」と嘆く。この無茶さこそが、少女性/乙女性の本質だ。
 また、「コンピューターおばあちゃん」のカバー。アレンジが過剰すぎる上に、転調しインフレーションが止まらなくなっている。この疾走感も爽快だ。
 その次のトラックの「街」では、うって変わってメロウで叙情的。
 「ごく当たり前の 言葉で 君のマチエール 剥がせやしないかと 少し 期待した僕を ご覧 まだその辺に転がっているよ」……素敵の一言。
 情景描写の巧みさも彼女の魅力だが、いかんなく発揮されているのが「シノノメ」。
 「コバルトの 磁性ほどに 引き寄せる 最初のシノニム 非常後うち 塞いだ手と 堕ちていく 砂礫の上」……これが、60年代の宇宙旅行を想起させるような旋律で歌い上げられるのだ。

 コメントにも寄せさせて頂いたが、日常や非日常とかロマンとかリアルとか、知らず知らずに線引きしている私たちに価値観を、事もなげに越えていく曲ばかり。これが21世紀の乙女心なんだ。

 ガールポップ好きも、そうでない人も、今、聴くべき名盤です。是非ともお手にとってみて下さいませませ。
 そして、PVも是非ともご堪能を。こちらのセンスの特異さも体感して貰いたいな。

ネットメディア乱立と「PV至上主義」

 Twitterをぱらぱらと眺めていて、非モテタイムズの記事が問題になっていることを今日の朝頃になってやっと知ったParsleyです。こんばんは。
 該当の記事は下記。mixiニュースに掲載とあって「いつの間に!」と驚いたのだけれどリアルライブ経由(参照)で載ったということのようだ。

 
「もう少年ジャンプじゃない、腐女子ジャンプだ」 腐女子狙いとされがちな漫画の特徴を探る(非モテタイムズ)

 記事自体も、あれれ感満載なのだけれど、それ以上に騒動に拍車をかけたのは、記事に対して「土下座しろ」とツイートしたユーザーに対して編集長が直接反応したことだろう。そこに、y_arim氏が即応してさらにカオスな情報戦が繰り広げられる展開に。このあたりは、Togetterにまとめられている。

 読者「土下座しろ」→編集長「いくらでもしますが」→y_arim「ん?」(Togetter)

 まぁ、この件についてのコメントは控えるが、出版社にいた身からすると、土下座って当たり前のようにすぐにするよねーと思ったりはしたかな。ネットメディアの責任者の方にも同じような話をうかがったことがあるから、たぶん私の感覚がひどくズレているわけではない、と信じたい。

 しかし、ここ一年くらいで、非モテタイムズ以外にもロケットニュース24はてなブックマークニュースエキサイトレビュー等、様々なネットメディアが次々に登場している状況。こうしてみると、gooニュース・ボクナリは立ち上げるのが早すぎたのかなぁと思ってしまうが、それはそれとして。ややこしいのは、各メディアが配信元にもなっている上に、別のメディアから記事の提供を受けていることだ。ここの交通整理の試みはまだ表に出てきていないので、いずれやってみようかと思うが、知らず知らずのうちに「ニュース」としてこれらの記事を目にして消費されているという事実は見逃せない。

 ちょっと話が逸れた。ここで問題として挙げられるのは、主に三点ある。
 一つは、取材なしにネットの情報だけを集めて、それを記事化している質の低いニュースで埋め尽くされていること。これについては、昨年の段階で既に津田大介氏が指摘している。

取材すら一切なしのガジェット通信やナリナリドットコム(+トレビアン、アメーバニュースが四天王な!)が目立つようになってきて、J-CASTやGIGAZINEが相対的にまともなメディアに見えてくるというこのネットメディアの現状。「バカと暇人のもの」にしてるのは一体誰かって話よね。less than a minute ago via web



 このツイートには若干の修正が必要で、「四天王」の中でも現場に足を運んで記事にしたものも存在するし、例えばネットメディア大手といってもいいITメディアニュースでも「ググっただけの簡単なお仕事」な記事も存在する。だいたい、ほとんどの地方新聞は通信社からの記事をそのまま掲載しているわけで、新興メディアがレベルを下げているのではなく、既存メディアと併せて全体的に情報の質が低下している、というほうが実態に近いのではないだろうか。
 ただ、メディアとして「節操がない」と思える新興メディアが目に付くのも確かだ。実際、私はどんなに単価がよくても(悪いけど)ナリナリドットコムやロケットニュース24で書こうとは思わない。もちろん非モテタイムズなんてもってのほかです!

 それで二つ目の問題は、各メディアが主にバナーやアフィリエイトのクリックによって収入が左右されることにより、アテンションエコノミーに飲み込まれてしまっていることだ。よりPVが稼げるスポーツ・芸能・ゴシップにアクセスが集中するため、本当に伝えるべき事象を取り上げたトピックが埋もれてしまうか、そもそも取り上げられない。コメントなどの反応が見えるメディアでは、なおさらこの傾向が強まる。そして、このことが情報弱者の量産につながっているのではないか。
 そして、多くの記事はテレビの話題であることも重要だ。結局、なんだかんだ文句言っても皆テレビ好き。ネガティブな反応を含めて、参照先・一次情報・ネタ元としてのテレビの影響力は未だに絶大だし、しばらくはそうだろう。

 三つ目の問題は、メディアの中のひとの心理。多少レベルが低くても、多くのネット民が食いつきそうな話題を持ってこようとすることだ。Yahooトピックスを統括している奥村倫弘氏はご著書で『痛いニュース(ノ∀`) 』について触れているし、コンデナスト・デジタルで元ライブドアの田端信太郎氏も「痛ニュー好き」を公言していた。
 2chにしろtwitterにしろ、ニュースの反応が可視化されることにより、良くも悪くもメディア担当者に影響を与えているということは、注意を払う必要がある。そして、そのことが、ニュースのレベルを下げる可能性があることは、もっと指摘されてもいいように思える。

 では、「質の高い論考」だけを読めばいいのか、ということになると、それもまたちょっと違ってくる。それについては、また別の機会に考えてみたい。

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
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『PS』10月号を読んだ。

 表紙・グラビアは蒼井優。グラビアでは「ノルディック・フォークロア」と題して、「北欧ガールに憧れて」というサブタイトルを付けている。29Pのニット+タートルネックニット&もこもこニット&花柄スカートの組み合わせや、グリーン基調でまとめた上にイヤーマフとか、森ガール的に参考になる着こなしでは?

 ニットは、6Pから6ページに渡ってPSモデル達勢ぞろいで特集しているのだけど、どの着こなしも素敵だったが、8Pのikumi×Ciaopanicのスタイリングがまとまっていて好み♪
 もう一つ、16PからのJRANASISの秋モードの記事広告もなかなか良かった。エレガント・ミリタリーやシンプルニット+ショートパンツ+ブーツにファーを首にプラスするスタイルが目を引いた。
 トレンドの特集は、もこベスト、マニッシュなシューズ、アウトドアMIX、ドルマンスリーブ(ゆるりらシルエット)、OJIパンがセレクトされている。特にOJIスタイルは、菊地亜希子を前面に、相武紗季らタレントを起用した特集を組んでいてかなり押している。森ガール+ゆるリラの最終進化系なのか。まだ街では目立たないが、注目してみたい。

 広告では、mysty womanTHE EMPORIUMが森ガールを意識したフォトを押し出して来ているのが目を引いた。対して、裏表紙にはユニクロがレギンスパンツを履いた黒木メイサで強烈に美脚をアピっていた。しかし、レギンスパンツは地味に着こなし難しそうな気がする。

 裏特集は「幸せ!パンケーキ時間」。ジャーナルスタンダードが手がける表参道のj.s.pancake cafeなど14店舗が紹介されている。ホットケーキ&パンケーキ好きならば、全店コンプリートしたいところだ。個人的には、横浜・港北のCAFE SALON SONJINの高さ10cmあるというホットケーキは悪すぎる。是非食べに行きたい!!

 あ、そうそう。付録のzuccaミリタリー缶ポーチは、ここ数号の中では一番出来がいい。カワサキハウスでは飴入れとして使うことにしました。

 最後に。84Pから「古着に恋するsuper girl」と題してSuperflyのSHIHOが登場していたこと。カラーニット+ロングスカートのインパクトが凄い。プリントワンピ+刺繍・チャーム付きブーツという着こなしは古新しい。今後、ファッション誌に登場する機会が増えるのかな。見守っていきたいところです。

Wildflower & Cover Songs;Complete Best 'TRACK 3'(初回限定盤)
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