セカイカメラが挑む世界~Talk Vacation Vol.1~



 4月24日に、Parsleyが最近どハマリのSweet Vacation早川大地氏がホストを務める「Talk Vacation」の第一回目が開催された。
 第一回目は、セカイカメラでお馴染みの、頓智ドットの井口尊仁CEO! Sweet Vacationとは、昨年のAppleストア銀座でのイベントで一緒に出演したり、渋谷をハートマークで埋め尽くす『AR恋文横丁』でコラボしたり、いろいろな試みをしていることもあり、とてもリラックスした雰囲気でのトークだった。

 会場では、Twitterからの質問を受け付けていたのだけど、その中で「宇宙カメラはどうですか」といった質問に対して「”セカイ”とはもっと大きな概念」とお答えになっていたのが、一番印象的だったかな。井口氏が”セカイ”に込められた想いというか、意味の深さは、「自分の見えているものが本当のものなのか」「地球は46億年前にあるって誰も説明できない。『ハルヒ』ではないけれど、5分前か5秒前に作られてそう思いこまされているかもしれない」という発言もあったりして、ARが同時性にとどまらず、「時系列の芸術」といった領域まで見据えていることが垣間見えた。
 また、シリコンバレーとアジアの比較文化論といっても差し支えないトークも興味深かった。ただっ広いシリコンバレーのような空間ではARは必要がないから、むしろ位置情報のようなテクノロジーが発達する。対して、アジアの街並みは情報の密度が北米に比べて段違いに多い。だから、ARが発達する。ARはヨーロッパとアジアがしのぎを削りあっている理由は、そのあたりにあるという話は、結構スリリングだった。
 「2010年はARにとって変化の年」という井口氏は、セカイカメラの中にいるキャラとして「初音バグ」を放つことや、あらゆるものがネットに集まってARになる、と語る。例として挙げたのが、車の中に妖精のようなキャラがいて(もちろん、ARの話ですよ)、彼女がドライブの行き先などを教えてくれたりする、といった可能性がある、という話。そこからラブプラスの話にいったのは、いかにも井口氏らしかったけれど(笑)。

 ちなみに、この時の模様は5月6日までこちらにて限定配信されているので、見逃したけど興味のあるという方はお早めに。

 しかし、セカイカメラに限らず、拡張現実(AR)に関するメディアの反応は、例えばヴァーチャル・リアル(VR)の時と比べるとなんだか鈍いように感じるのは私だけだろうか? このイベントに限らず、井口CEOの動向や発言は、現在のITベンチャーでは常に注目すべきだと思うのだが、この日入ったプレスはゼロ。感度低いなぁ、という感想を、正直抱いてしまう。

 しかし、トークの時と比べて、ピアノソロの時のDaichiさんの緊張といったら! もちろん、「ラブカメラ」も「月夜のユカラ」もとても素敵でした。

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事業仕分けのネット中継で醸成される「空気」

 民主党政権の目玉企画である事業仕分け、第二弾が23日から開始されました。
 当初は、オープンプレスクラブで、手分けしてUST中継をしようという話だったので、Parsleyも手を上げていたのですが(参照)、今回5つもの事業者の中継があり(そのうちの一社が元職の関連会社でウケたけど)、第一弾の時に『ケツダンポトフ』様が敢行されたような傍聴席から中継するのは意義が薄れたという理由で見送られたので(参照)、こまごまとした作業が溜まっていることもあり、ずっとおうちにいました。

 ネット5社、仕分け生中継 反応殺到「読みきれない!」(朝日新聞)
 
 私はノートPCで作業をしつつ、横目でtwitterのタイムラインが流れているのを追って仕分けの内容を流し見していたのだけれど、時々入ってくる津田大介氏のツイートなどで、「あれ?」と感じたことがあればUSTを観に行く、といったゆるーいチェックで、情報に接していた。
 「全部の情報が追いきれない」というのは当たり前の話で、万単位のひとがつぶやく言葉を一つ一つ追っていくこと自体に意味はない。
 大事なのは、重要な情報を嗅ぎ分ける能力と、そこで醸成される「空気」を体感することだ。

 例えば、津田氏のJICAと蓮舫議員のやりとりのツイートが目に留まって観に行ってみると、実際に行われている議論と、外側にいるtwitterやニコニコ生中継で流れているコメントなどから、明らかに「あー蓮舫さんの勝ちだー」みたいに感じることが出来る。
 これって、ある意味で「世論」の可視化とも言えるのかもしれないな。
 早晩、このネット上での「空気」が、会場にも伝わって議論そのものにも影響を及ぼすようなフェイズにまで移行するだろうし、そうなってくると、政治の現場と、一般人との距離が縮まって、視聴したりtwitterやニコ生のコメントを投稿したり見たりする人も「ゲーム」の参加者となり、ますますエンタメとしての「面白さ」が増していくことになるのではないか?

 それが果たして正しい議論や政策決定のプロセスかどうかは、まだ分からないけれど、少なくともこれまでとは違う「空気」の上で、政治が行われている、ということは、注目する価値はある。
 twitterの「空気」に身を委ねながら、そんなことをぼんやり考えて、一日めの仕分けは終わった。

 まぁ、幸い比較的時間に自由が利く身ではあるので、来週のどこか一日は仕分けの現場の「空気」を吸いに行ってみようとは思えるだけのものは、ネットの「空気」にはあったというのが、私なりの感想になります。
 行くとすれば、最終日かなー。今のうちにどんな案件が挙がっているのか、調べておこっと。

 

 

森ガールと音楽

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 先月に森ガールを取り上げたムックが二冊発売になって買ったはいいが、読まずに積みっぱなしになって放置していたので、今更エントリーにするのは周回遅れもいいところなのだけど、メモ替わりに。

 『別冊spoon.』と『森ガールvalon』で共通していたのは、音楽と森ガールの接続を試みていたこと。
 特に『別冊spoon.』の方は、「森ガールの起源は’90年代のガーリーカルチャーなのでは?ということ」とアジェンダ設定をして、『Olive』に代表される雑誌やCDの「パッケージ文化」が、一曲ごとのダウンロード・着うたによって消費されるゼロ年代にも「ガーリー」という要素は受け継がれてきた、という仮説を提示している。
 そして、デザインチームが『Olive.』の影響を強く受けているというシロップ.のブランド紹介を、エリック・ロメールの『夏物語』へのオマージュとして撮りおろすグラビアへと移行する。パブ込みとはいえ、すてきなんですよ、お洋服も写真も。

 中ほどには、カギヒデキと女性DJチームTwee Grrrls Clubのsumireの対談が掲載されている。冒頭では、小沢健二のツアーに踊る川俣裕美女史の文で、カジくんが’90年代感を復刻させた、とする。しかし、この対談は凄い。’90年代渋谷系ワードだけでなく少年ナイフとかチボマットとか、イギリスや北欧のインディーズレーベルとかの名前がぽんぽんと出てくる。よくこんな娘見つけてきたなぁ、と思ってびっくりした。

 『森ガールvalon』の方も、表紙がSalyuで、中ページにデビューしたばかりのヴァイオリニスト花井悠希をモデルにした6ページのグラビアが組まれている(ちなみに彼女は『spoon.』の方でも紹介記事とコロンビアの広告が掲載されていた)。
 また、前回はスナフキンみたいな森山未來に苦笑させられた「森ボーイ」グラビアはミュージシャンのトクマルシューゴを起用し、ヘンテコな森小屋ではなく四谷にあるチェコ料理のブックバーだあしゑんかで撮影している。

 通常の音楽のページは2ページ。ここでは『spoon.』と同じで野宮真貴やカヒミ・カリィを引き合いに’90年代ガーリー文化との接続を図っている。『spoon.』と違うのは、コシミハル・遊佐未森・小川未潮・さねよしいさこを「ちょっと不思議な感覚をもつミュージシャン」として「森ガール的」と言い切っていること! まるでtwitterでの森ガール論争を見ていたようじゃないですか!!
 しかし、Parsley個人としては、ここで紹介されているSalyuや安藤裕子や湯川潮音、cossami、阿部芙蓉美といったシンガーたちが「森ガール的」と言われると、そうかなぁというか、ちょっとピンとこないなぁという感じだったりする。
 ’90年代ガーリーミュージックとの接続、という面でいえば、主に京都を中心に活動しているaudio safariのボーカル・桜井まみや、昨年待望のフルアルバムをリリースしたフレネシなどが、より’90年代を意識しているように感じられるのだけれども。

 二誌とも、とても頑張って、森ガールを「文化」という側面に育て、それを駆動させるために音楽という切り口で責めていくという編集の想いが十分以上に伝わってきて、Parsleyはとても好ましく感じられた。でも、実際の森ガールたちに届き響いたかどうかは、ちょっと分からないなぁ。
 『spoon.』の巻頭に戻ると、mixi森ガールコミュ管理人のchoco女史が『Olive』っぽいとよく言われてなぜだろうと思っていたというエピソードが載っている。
 文脈が一度切り離されて、ほどけた糸を見つけて結びなおす作業が結実する日は、果たしてやってくるのだろうか?

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求職活動二ヶ月ほどの雑感みたいな

 私ことParsleyが前職の広告企画会社から会社都合での退職を勧告されてから(参照)、そろそろ二ヶ月になった。3月24日付けで正式に退社してからは、「副業・零細ライター」だったのに「本業・零細ライター」になってしまった。
 当然、食べていけないので、いろいろなところにご迷惑になることを承知で営業してみたりもしたのだけれど、それはここでは触れない。ここでは、転職戦線の前線に放り込まれたParsleyの苦闘をつらつらと愚痴、もとい報告したいと思う。

 求職活動は、退職勧告を受けて直ちにはじめた。利用したのは主にWebサービス、特に『Find Job!』『マイナビ転職』。Webディレクター/プランナーという職種の情報が豊富な前者と、過去二度の転職でお世話になっている後者で、なんとか今回も職にありつけないかなぁ、というところだった。
 最初のうちは、面接へのステップの敷居が過去に比べるとかなり低かったので、「何とかいけるんじゃね?」と考えていたParsleyだが、その甘い期待は3月中旬になると消えた。やはり、30代前半という年齢と、Webディレクターとしての経験3年という中途半端さは、市場からの評価はどうしても低くなる。仮に各業務で結果を残していたとしても、だ。
 また、今回はtwitterからのご縁があって、人材紹介会社への登録もしてみた。紹介された案件は、ECサイト運営業務で、やや私の志望職種とは違っていたのだが、会社の安定性と給与面などが希望と近かったので、お話を進めてもらうようにお願いした。が、これもECサイト運営の経験が少ないと判断され書類選考で脱落した。

 4月21日の時点で、私は51社にエントリーし、15社の面接に臨んでいる。そのうち13社からは「弊社の状況および貴殿のご経験などを勘案し、慎重に検討致しました結果、弊社では貴殿にご活躍いただける場がご提供できないという結論に至りました」といったテンプレ文とともに脱落を伝えられた。残りの2社は選考待ち。

 まぁ、きっついなぁー、というのが、正直な感想になる。

 
 さて。ここで「なぜハローワーク行かないの?」と疑問に感じた方がいらっしゃるだろう。実は、書類の手続きが冗長で、私の手元にまだ離職票が届いていない。だから、失業者として認められないのですね。ヽ(`Д´)ノウワワワーン!

 しかし、この年齢になると、自分から求職をしていくというのは、よほど分かりやすい実績を上げているか、経歴にレガシーカンパニーの名前があるか、職種が「上流」であるか(Web屋でも上場企業とか大手代理店関連とか)、そういったものが記載されていないと難しいんじゃないだろうか? 各職で「それなりの」実績を示していることを、職務経歴書に書いて、面接官に伝えても、なかなか響かない。
 というか、それぞれの職場では、それぞれの事情があるし、スキルだけでなく雰囲気とか和とかスタッフ間の相性とか、そういう側面でも判断されるから、一概に能力だけでも判断することが出来ない。
 ちなみに、私が面接をしたところは一社を除いて人事担当ではなく、現場のマネージャークラスの方が面接官を担当していた。自分も経験あるけれど、通常の業務をこなしつつ面接をするのは、かなり労苦が大きいのは言うまでもない。
 多くの中小企業で、マネージャークラスが「人事」も投げられているということが転職市場にかなり功罪あるなぁというのがParsleyが毎回思うことでもあるのだけれど、このあたり指摘された本もないし、人事担当者以外のまで分かりやすく簡便なメゾットにまで落とし込んだ指南書も寡聞にして存じ上げない。ここは良書を待ちたいところだ。

 話が逸れた。まぁ30代半ば・Webディレクター/プランナー志望・経験3年というあまりに微妙すぎる経歴では、仕事なんて簡単に見つからないっす、ということなのだが。例えばこのブログが積み上げたこととか、地味に文芸系のメルマガを一年近く週刊で続けてきたこととか(これね)、仕事の外で培ってきた人脈とか、そういったこともひっくるめて、社会に対峙していくためには、どこかに所属するというかりそめの「安心」を求めるのは諦めて、手前の顔で勝負するのが、自分にとっても社会にとっても「最適」なんじゃないか? …なんてことも思ったりするし、どこかで独立という気持ちは持ち続けていたのだが、何といっても今回は準備期間がなかった。

 とはいっても、ここで泣き言をいってもはじまらない。石にかじり付いたり、誰かに泣きついたりしてでも、生きていかなきゃいけないし、そのためにはどうしたらいいのか、考えつつ手足を動かし続けるしかないな、というのが今のParsleyの「リアル」だ。

 そんな感じで、Webディレクターの仕事募集ちゅう!MTとCSS得意です!!
 ライター・企画のお仕事も募集ちゅう!!過去のお仕事はこちらをご参照下さいませ!!

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転職四季報 2010年版
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『電子書籍の衝撃』を読んだら議論はおしまい!

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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 献本頂きました。ありがとうございます。

 電子書籍/電子出版に関しては、いま盛んにシンポジウムが催されたり、関係者の間で勉強会(という名の親睦会)が開かれたりしている。皆、Amazon・キンドルやApple・iPadの動向を探ったり、個々の持ち場をどう「守って」いくかに思いを巡らせたり、新たなビジネスチャンスを模索したり、いろいろなひとがこっそりひっそりうごめいている。(そのことは『メルマガクリルタイ』でちらりと触れたので、ご興味のある方はご参考に)
 だが、そんなことは、本書『電子書籍の衝撃』を読んでもうおしまいにして、頭を手足動かすことに使うフェイズに突入すべきだ。もうシンポジウムや親睦会に出るのはやめにして、ひとまず作ってみよう。
 それが、本書を読んだParsleyの感想になる。

 本書には、2010年2月現在の、電子書籍を巡るアメリカの状況、個人出版―セルフパブリッシングをAmazonで実際に行う方法、先行事例としての音楽業界でのコンテンツ消費の変遷…といったことが詳らかに説明されており、事実ベースの情報で、これ以上知るべきことはあまりないように思える。つまり、本書を読めば、電子出版に関する知識は必要充分だ。

 すごいな、と思ったのは、第四章「日本の出版文化はなぜダメになったのか」。
 雑誌と書籍が同じ流通―取次会社を通るようになった歴史的経緯から、POSデータによる配本の弊害、90年代までは通用した「所有する価値」という記号文化の中で本もアイテムとして消費されてきたこと。そして、多くの出版社が刊行し取次を通して書店にならぶ本・雑誌のほとんどが委託制度を採用しており、それがお金の流れ―返品による「部戻し」分の支払い(著者はこれを永江朗氏の言葉を借りて「本のニセ金化」と呼んでいる)が大量の本を出さなければならなくなっていること。こういった出版業界が抱える問題を、関係者以外の読者にも伝わる平易な言葉で説明した本はこれまでなかったのではないだろうか?
 結果、「くだらない本の量産。同じような著者、同じような内容、同じようなタイトルの本が次から次に刊行される日々」の現状を「守るべき「出版文化」なんていうものは、そもそも幻想でしかない」と切って捨てるのだ。佐々木さん、かっこいいぜ!
 もっとも、本書が取次を解さないディスカヴァー21という出版社から刊行されているから、書けた芸当なのかもしれないけれど。

 『404 Blog Not Found』様が「本のアンビエント化」が本書でいちばんおいしい部分で、そこにネタバレは野暮だとおっしゃっているが(参照)、野暮を承知で触れる。
 音楽の世界は、iTuneによって外に持ち出すためにCDからMDなどにコピーしたりする手間を省き、自分の聴きたいと思った瞬間に聴きたい楽曲を魔法のように引き出せるようになった。本も電子化されると、これまであった物理的な障害―どんなデバイスでも読めるようになり、在庫切れや絶版といったこともなくなり、古い本も新刊も「アマ」も「プロ」も全てがフラットに手に入るようになる。
 そういったアンビエント化された世界になると、これまでとは販売可能な本の裾野が広がる。
 ということは、Parsleyのような、求職中の木っ端ブロガーがない頭を絞って出したコンテンツが、これまでよりずっとハードルが低く「出版」が出来て、ちょっとした運に恵まれればスマッシュヒットする可能性だってあるわけだ。
 なら、既存の出版社や取次や印刷会社がしがらみにがんじがらめになっているうちに、先行者利益が享受できるよう動いたほうが絶対にいい。Parsley、お金も何もないけど、たった今から手足を動かすよ。
 ちなみに、ちょっとした運に恵まれるためのヒントは、終章「本の未来」で触れられているが、ここまで明かすと本当に野暮なので本書に譲る。

 それにしても。毎回著者の本を読むたびに、引き出しの多さに驚嘆させられる。まさかここでブライアン・イーノと再会させられることになるとは!!
 本書で紹介されていたおかげで、TIME OUT TOKYOに掲載された特別インタビューを読むことが出来た。著者流の言葉を使えば「セレンビティ」。
 これだから、読書は止められない。

Everything That Happens Will Happen Today
David Byrne;Brian Eno
Todo Mundo (2008-11-25)
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2億年後の地球とドラコニア

フューチャー・イズ・ワイルド
ドゥーガル・ディクソン ジョン・アダムス 松井 孝典 土屋 晶子
ダイヤモンド社
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 献本頂きました。ありがとうございます。

 『フューチャー・イズ・ワイルド』は人類が滅亡した500万年~2億年後の地球が、大陸の移動や氷河の侵食・火山活動などで、環境が激変する中、それに対応するべく進化していく動物たちの姿を追っている、非常にスケールの大きなテーマを扱った内容になっている。
 何よりも凄いのは、本書のプロジェクトに第一線の科学者・生物学者達が参集し、各生物体の未来図を荒唐無稽なものでないものへとすべく「未来の動植物が現代の動植物と同じような物質で出来ている」と仮定した上で、シュミレーションをした結果、今の動物たちの姿からは想像もつかないような進化を詳らかにしたことだ。
 二億年後の世界は、ちょうど二億年以上前に存在していたいわれる地球ただ一つの大陸-パンゲア大陸のように、今現出している各大陸が移動して、再度一つの大陸-第二パンゲアになるのだという。
 表紙にもなっているオーシャンブリッシュは、二億年後の世界に生息する「空飛ぶ魚」。カモメくらいの大きさで、尾ひれが翼に進化、肺まで持ち合わせているという。火山活動による大量絶滅により、地球から鳥類が姿を消した海上では、彼らの群れが空を埋め尽くしているのだ。
 脊髄動物が死滅した地上に目を向けるゾウほどの大きさにまで進化した頭足類の子孫メガスクイドが闊歩し、木の枝をこん棒や飛び道具として使うことが出来る知性を持つイカの子孫であるスクイボンが森林を行き来している。

 『フューチャー・イズ・ワイルド』のページを読み進めながら、このワクワクする感覚を以前にも味わった気がしていた。
 で、もしかして、と思って本棚から取り出したのが、『ドラコニア綺譚集』。
 澁澤龍彦の国・ドラコニアに生息するサラマンダーやスキヤポデスやバジリスク。これらは、彼の蔵書や蓄積された知見が孵化し深化していった生き物たちだ。彼らの姿と、科学者・生物学者達がシミュレートした二億年後に至るまでに気候・風土に最適化されていった動物たちの存在は、非なるようでとても似ているように、Parsleyには思えた。
 もし仮に澁澤が本書が刊行された2004年の存命ならば76歳だったが、おそらく嬉々として二億年後の世界を読み、自分の世界へと取り込んだであろうことを、半ば確信を持って断言することが出来る。
 たった一日の生命を与えられ、広い砂漠をえさ-オーシャンブリッシュの死骸-を求めて飛び回り、そこに子を残すバンブルピープルなどは、いかにも澁澤好みに思えるし、背中の藻類で光合成できるガーデンワーム(ゴカイやイソメの子孫)のビジュアルはドラコニアに生息しても不思議ない。

 多くの学者達を結集した世界と、一人のディレッタントがインナースペースで編み出していった世界とが、私という読者を介して交わる。これだから読書は止められない。

ドラコニア綺譚集 (河出文庫)
渋澤 龍彦
河出書房新社
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『「空気読み」企画術』を読んだ

「空気読み」企画術
「空気読み」企画術

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跡部 徹
日本実業出版社
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 献本を頂きました。ありがとうございます。

 本書はリクルートで『カーセンサー』『赤すぐ』等の編集長を歴任した、株式会社空気読み代表の跡部徹氏が、「いい企画」=課題を解決する企画を立てるためのフレームワーク術についてまとめられている。著者によれば、『空気が読めれば、「いい企画」は誰にでも作れる』という。
 個人的に共感したのは、「自分に刺さった広告を記録する」という箇所と「雑誌5冊を乱読する」という箇所。どちらもParsleyは実行しているけれど、ケータイの写メ(最近はモバツイの写ツを多用している)しておくことや、普段は買わないような雑誌を敢えてまとめて買って読むことで気付くことなどを記録しておくことは、後々役に立つことが多い。
 また、evernoteの利用のすすめや、『今日のナカヅリ』の紹介など、情報整理術やトレンド情報を得るTIPSなどは、学ぶところが多いのではないだろうか。

 ユニークなのは、風呂ナシアパートの企画を考える、というフレームワーク。もともとは著者が見かけた不動産広告から派生されているのだが、消費者の「安く住みたい」などの希求と、商材の「客付けが困難」「敬遠されてしまう」といったマイナス要素をどのようにマッチングしてパッケージングしていくか。ユーザーの「身の丈消費」「ストイック・成長感」といった根の部分の希求を「空気読み」することで、「スポーツクラブ会員権付きアパート」「ミニマムアパート特集」といった企画が考えられる、としている。

 しかし。本書はリクルート出身者の優秀さとともに、限界も露呈しているような印象を覚えてしまった。
 具体的にいえば、「ヒット」企画という発想。趣味趣向の多様化・細分化により、「ヒットが生まれにくい」と冒頭で著者は述べるが、そもそも「マス」を狙った企画でなく、ある程度ターゲッティングが明確な企画の方が求められているようにシフトしているように感じる。風呂ナシアパート企画もニッチを狙ったものだと思われるが、全体として「ヒット」を求められている企画者向けに書かれたものなのか、「マス」の匂いが消しきれていないような気がする。
 また、最後の章は「どう企画を通すのか」ということに割かれているのだけど。通らない企画は、会社ではなく自分でやってしまえばいいのだ。会社が何らかの身分を保証していた時代から変化している現在は、個人のフットワークが求められている。自信のある企画が弾かれたなら、さっさと見切りをつけて、手足を動かすべき。
 そういった、個人プレーに走る勇気と、アジェンダセッティング、そして費用対効果の見極め、というところがこれからの「企画」には盛り込まれる必要性があるように思える。本書はそういった部分は欠けている。

 そうはいっても、他人の視点や自分の不満、ターゲット側に立って考えてみること、通勤時間のプロファイリングなど、さすがにリクルートで成功したひとだな、と感じる部分も多々あった。企業内で企画を担当している方は、一読して損はないのでは、と思った。

 

『アップル、グーグル、マイクロソフト』を読んだ

 献本を頂きました。ありがとうございます。

 本書では、『iPhone』の著書がある岡嶋裕史・関東学院大学准教授が、クラウドコンピューティングの意義を再確認した上で、アップル・グーグル・マイクロソフトの戦略を読み解いていく。それで、その中で日本企業はどのようにふるまえばいいのかを、最後の章で触れている。
 結論からすると、日本は贅沢なデータセンタなどを未だ後生大事にしていてグーグルのようにサーバー自体を「使い捨て」にする感覚からすると「遅れている」し、官・産一体になって戦える構造でないから、もうクラウドで競争するのはあきらめて、ガラパゴス携帯を進化させればいんじゃね、的なことで〆られている。見も蓋もないけど、私も異論なし。

 著者の優れているところは、たとえの巧みさにある。あいまいで空を掴むようなクラウドという概念を水道の仕組みで説明したり、これまでの個々のハードウェアにデータを保存する「オンプレミス」の概念をタンス預金、クラウドを銀行預金、としている。何冊も新書を刊行する著者の秘密は、この門外漢にもやさしい「わかりやすさ」にあるのではと思う。

 個人的には、iTunesやApp Storeでコンテンツ課金という喉元を押さえたアップルをクラウドのプレイヤーとして認識することには妥当性があるし考察する価値も充分にあると思うのだが、同じように流通販売サイトを運営し、なおかつEC2・S2というサービスを提供しているAmazonの戦略にあえて触れなかったのは、よく分からないなーと感じた。アップルの章の後半でiPad、スレートPCと並び、Kindleと電子書籍市場に言及が20ページも割いているので、なおさら独立した章として取り上げなかったことに違和感を覚えた。

『PS』5月号を読んだ。

 今月号は、8周年記念号ということで、かなり豪華な構成。

 まず、蒼井優ファンの方々は永久保存版です。表紙に加えて、44Pより大挙22ページに渡って特集が組まれています。春のトレンドとして「ネオロマンティック」と題したグラビア、プライベートについて、私物の紹介など、写真と本人のコメントで構成されて非常に素敵で、久しぶりに「やっぱり『PS』編集いいな」と感じたよ! 特に、小泉今日子や岩井俊二監督、カメラマン、スタイリストらが彼女の魅力に語っているところは、彼女の良さが分からないと感じているひと程読んでもらいたいと思う。

 また、宮崎あおいファンの方々は、100Pより映画『ソラニン』の特集ページの高良健吾とのインタビューは必見! 原作のシーンで紹介されるキャラクター&キャストと、渋谷・新宿でSNAPしたギター女子など、こちらもタイアップ企画としてクオリティ高い!
 宮崎あおい関連では、8周年のお祝いメッセージ(6P)で彼女のカードが異彩を放っているので是非注目して欲しい。おそらく、これが「森ガール」のマインドなんだと思う。

 モデル陣も負けていない。「ほっこりあっこ×モードな入夏のとっかえっこで31DAYS」(32P)では、26歳設定の菊池亜希子と22歳設定の入夏がルームシェアしてお互いの服を貸し借りしつつ着まわしするという内容。菊地亜希子が2歳サバを読んで入夏が5歳上なのが面白いが、年齢設定を微妙に上げていることは注目に値する。また、ファッションのスタイルがよりハイブリットに混在して○○系とラベリングすることが難しくなっていることも浮き彫りにしている。
 同じことは、アリスとikumiを起用している「フラットシューズの日もバランスUP!計画」でも、カジュアルからモード、森ガールほっこり系まで様々なスタイルに対応している。

 個人的に至福だったのは、4ページにも渡るパフェ特集! タカノフルーツパーラー京橋千疋屋といった老舗から、um barbleのチーズケーキパフェやSal Levanteのクリームプリュレパフェといったスイーツ系、nana’s green teaの黒胡麻がトーショコラパフェといった和風まで押さえている。どれも食したいのだけど、特にフルーツパーラーフクナガのパフェは今度四谷三丁目に行ったときに絶対に寄る!!

 さて、今号は普段は広告の裏表紙を『姉PS』ということで今宿麻美をカバーに持ってきている。ここではKBF+パドカレといった、若干お値段高めのブランドが紹介されている。モデルは、今宿と菊地亜希子が主。まぁ、年齢層のレンジがどんどん広くなっているから、それに対応する手段なのだろうけれど…提案しているスタイルがピンとこないというか、あえて年齢で分ける必要性はどんどん薄くなっているようにも感じるところ。
 しかし、ベランダでプチ菜園が『姉PS』枠なのは納得できない! 我が家ではこれから「凛々子」ことトマトを育てようとしていたところだったのに…。若いひとでも育ててもいいと思うんだ。

「ソラニン」スコアブック
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