『ウェブ炎上』を読んだ。

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書 683)
荻上 チキ
筑摩書房 (2007/10)
売り上げランキング: 6835

 『トラカレ』の中のひと、萩上チキ氏の単著。
 本書の印象を列挙してみると、網羅的、抑制的、政治的‥といった感じ。ちょっと言葉が悪いけれど、「ウェブ界の風紀委員」といったポジショニングを目指しての言説のような印象を受けた。

 論点や事例を紐解いていく姿勢はほんとうに丁寧。一章の「ウェブ炎上とは何か」でインターネットの生い立ちから現在までの流れを一通り押さえた上で、「Web2.0」という言葉が登場した背景と、サイバーカスケードが発生した例を並列に扱っている。たぶん、それほどブロゴスフィアどっぷりではないひとでも、一体どんなことが起こっているのか、おおまかには把握出来ると思う。

 あとがきで、「極端な悲観論や楽観論から距離を取りながら、ウェブの性質に目を向け、インターネットとの共生、そしてインターネットを通じた人間同士の共生に向けて言葉を連ねてきました」とあるように、全編を通じて筆致は穏やか。
 ネットにおける偏見やレッテル張りに対してやんわりと否定してみせたりする姿勢には、好感を持つ読者は多いのではないだろうか。

 だが、そんな中でも、「個人情報をめぐる騒動」では、やや強めの主張を展開していて目に止まった。

 もちろん筆者は、それらを個人の「不用意さ」のせいにすることが妥当な解釈だとはまったく思いません。「ウェブ上に情報が出回ってしまった以上、どのような利用のされ方も受け入れなくてはならない」ということはありえない。愉快犯的な書き込みは法的にも問題ありでしょうし、このような事例さえも「自己責任」にしてしまうと、個人にかかわる負荷が過重なものになってしまいます。情報の意図せざる流出の予防といっても、本人の努力だけではどうしても限界があるでしょう。
 このように、情報収集に基づくこれらの集団行動が特定個人への集団圧力として機能した場合、そのペナルティはあまりにも過剰になりがちです。(P47)

 Parsley個人としては「まったく思いません」と「ありえない。」というほど、コンセンサスを得てはいないように思えるけれども、この箇所のおかげで中立の立場に固執しているというレッテル張りからは救われているのも確かだろう。
 もっとも、ここに限らず、どことなく「政治」の香りがするのは、筆者がジェンダーフリー・バッシングにおいて、Q&Aサイトを作成して保守派の「内容的にトンデモなサイト」がgoogle検索で上位に表示される状況を「中和」しようとした行動の実績に基づくものだと思われる。
 ただ、この自身の体験を挿入したことによって、「判断材料をしっかり集めてからの議論」よりも「ポジショニング」の方が、論争において有効なことを図らずも示す形にもなっている。
 加えて、本書の提唱する、「ウェブ上の冷静な討議」が、何のために行われるのか? 「そういったものが、果たしてほんとうに必要なのか」という問いをされた場合、「それが正しいから」といったエモーショナルな回答しか提示できていないところが、若干弱い部分かもしれない。
 あと。あとがきで匿名言論のバックラッシュとして完全実名制を取り入れることを主張することを、「大変危険」とまで記すのならば、もう少し本文で実名匿名論の流れをフォローして欲しかった。

 共感を覚えたのは、「ハブサイトの役目」という項(P203)。グーグル八分問題と絡めて、検索エンジンを多くのハブサイトの一つという位置にとどめ、小さなアーキテクチャ(ニュースサイトやまとめサイト、ソーシャルブックマーク、巨大掲示板…etc)がせめぎあう状況、というフレームを提示している。このような視点から、グーグル八分を対処療法的に語るのは重要だと思う。

 それにしても。「鮫島事件」のことを種明かししてしまって本当によかったのだろうか。『トラカレ』の中のひとががそこまで度胸があるひとだとは知らなかった。

『Number』690号を読んだ。

 今号はプロ野球クライマックスシリーズ一色。
 『Fighters Style Story 北海道「感動大陸化」計画』なる別冊付録が付いている。ファイターズが東京から北海道に移って、オーナー企業、選手、スタッフがどう根付いていったのか、というテーマで纏められている。
 宣伝畑部門出身の球団社長・藤井純一氏の地域密着の集客作戦や、グッズの直販化した話を織り込み、マネジメントに4ページ使っている。やっぱりこういう泥臭さって大事だなんだろうな。
 トレイ・ヒルマン監督は、「一生懸命」とか「絆」とか、メンタルなキーワードが並べていて、そことはかとなくパワー・フォー・リビングの影がちらついているような気がした。

 野球以外では、中田潤氏の内藤大助インタビューと、12年ぶりにオリンピック出場を決めた体操女子団体の記事が目を引いた。ノリック・阿部典史の追悼記事は2ページだった。

 
 

西村修に関する2、3の事柄

 私が西村修を生観戦した唯一の試合が、2004年9月25日の全日本プロレス後楽園大会の第四試合
 西村は、この後で引き続き武藤敬司と組んで世界最強タッグ決定リーグ戦に出場した。新日本の両国大会でもこの二人で当時「新三銃士」とされていた中邑真輔・棚橋弘至と戦っている。このあたりはちょっと記憶が曖昧。(参照
 で。このタッグマッチを実質的に支配したのは西村の「無我」ワールドだった。何か凄かったかといえば、試合中に対戦相手のLOVEマシンズが持ち込んだ「リストラボックス」に閉じ込められて座禅を組んで瞑想をはじめたのだ!(スポナビの写真参照
 この試合の直後に急逝したビッグ・ボスマンの追悼セレモニーがあったのだが、10カウントゴングの際にもボックスからは出してもらえず、座禅を組んだまま瞑想から黙祷にシフトした。たぶん。
 西村をリストラボックスにブチ込んだ片割れであるラブ・マシン・ストーム=嵐は、2006年に大麻所持で逮捕されて全日本を追われた後、今年の7月に西村の口添えで本名の高木功として無我のリングに上がった。
 そして、今回の西村の無我離脱・全日本プロレスへの入団発表である。(参照

 西村は、三銃士・四天王以降で、おそらく一番メディアでの発信力・話題作りが長けているレスラーである。メジャーなシングルのベルトを巻いた経験がないにも関わらず、クオリティペーパー・東スポでも大きく扱われるし。「NYにて立ちションで逮捕」とか「ドイツでヒロコ(鈴木健想の妻)と不倫疑惑」とか。
 今回も、彼なりの仕掛けがいくつも見られた。19日のサムライTV『S-ARENA』では、無我後楽園大会から全日代々木大会に向かう前の姿がキャッチされている。
 この絵作りが秀逸すぎた。試合後にリングタイツのまま、Tシャツも着用せずに駐車場に直行。後部座席にトランクを放り込むと、『週刊プロレス』松川記者らの質問に一切答えずに愛車に乗り込み発進させていった。
 もしかすると、佐々木健介vs川田利明の三冠ヘビー戦を差し置いて、武藤と並んだ記者会見のショットが『週プロ』の表紙を飾ってしまうかもしれない。もちろん、『無我』においてはそこまで大きく扱われることは望むべくもない。

 しかし。西村修のイメージを列挙してみると、彼が矛盾のひとだということが浮き彫りになってくる。

 カール・ゴッチが師匠。
 癌を食餌療法で自然治癒。
 長州力は絶対に許さない。
 ビール党。
 映画「いかレスラー」で主演。主題歌も歌う。
 慶応大の通信課程で哲学専攻。
 インディー批判。
 そして、「無我」の伝道者。

 Wikipediaでも、わざわざ「整合性問題」なるカテゴリーが設けられていたりする。(参照
 ま、ゴッチ・スタイル=シュートと捉える向きからすれば「?」が付くし、ご飯健康法なんて行っているわりにビールは飲みまくりだし(この当たりは『プロレス・格闘技超”異人”伝』のインタビューが詳しい)、海の向こうではChikara proとか上がっていたじゃん、などなど、どこから突っ込んでいいのか分からないくらい沢山の疑問点を内在している。
 彼の恐ろしいところは、それらを全て包括して、西村修=無我というキャラクターを確立してしまっているところなのだ。しかも自覚的に。そうでなければ、「無我」を個人で商標登録したりはしないだろう。

 残念だけど、そこまで周到に構築されたイリュージョンに残された藤波以下のレスラーたちが対抗して「無我」を名乗り続けるのは難しいように思える。
 幸い、西村と違って、藤波の代名詞は「無我」だけじゃないのだから、新しく看板を架け替えて再出発すべきなのではないだろうか。例えば「プロレスリング・マッチョドラゴン」なんてしたら、オールドファンを取り込むのには最適なんじゃないかな。それで城下町を全国行脚すれば最高!

 ‥‥ま、何にせよ。俄然二団体の動向に目が離せなくなったことは確かだ。

feel:いかレスラーの歌(西村修 featuring TOMOKA)(CCCD)
都田和志 芳賀洋介 TOMOKA 西村修 featuring TOMOKA TOMOKA/西村修 featuring TOMOKA 河崎実
エイベックス・トラックス (2004/07/14)
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「いいめもダイエット」サービス停止の雑感

 いいめもダイエット サービス停止のお知らせ(「いいめも開発ブログ」)

 あらら。残念。
 関係者の皆様におかれましては、これにめげずにまた新しいシンプルでかわいいサービスを開発されるよう期待しています。

 それで、問題になってくるのが、以下のくだり。

 しかしながら、著者の岡田氏より、「記録をしてダイエットに結びつけるという発想は、私の著作からスタートしていますので、見た目上はただの記録するのに便利なものですが、それをダイエットに結びつけているという点で言えば、私の著作の核心と同一ですので、著作権の侵害に当たる可能性が極めて高いと思います」などのご指摘をいただき、「「いいめもダイエット」の取り下げを希望いたします」と求められました。

 私は『いつまでもデブと思うなよ』を読んでいないので、何ともいえないのだけれど。
 「著作権」というのではなく、「パブリシティ権」に触れると指摘したのならば、まったく波風が立たなかったんじゃないかな、と思う。
 Wikipediaにも判例が出ているダビスタの東京高裁判決によれば、「その氏名,肖像から顧客吸引力が生じる著名人が,この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利を有する」とある。(参照
 要は、このリリースエントリーに、岡田斗司夫氏の名前と「レコーディング・ダイエット」という文言が入っているのがアウト。その点、開発チームも「事前に承諾を得なかったこと、無断でお名前を記載してしまったことなど」が不適切だったと明記している。
 
 で、なんでこのタイミングなのかと思ったら、10月12日にITmedia+Dに「ケータイの予定表を使って“メタボ”に歯止めをかけてみる」という記事がアップされていて、それがYahooニュースで15日9時過ぎに配信されていた。(参照
 この元記事には、「いいめもダイエット」の文字は一つも出てこないのだけど、文中に「携帯電話を使った手軽なカロリー計算の方法」として10月2日の「いいめもダイエット」紹介記事のリンクが張られていた。
 それで、あぁ、なるほどねぇと勝手に納得した次第。

 この件に関しては、言葉のあやが元で誰が悪いというものではないと個人的には感じているけれど、なんだかヘンな方向に転がっていきそうな悪寒もするし、ちょっと心配。

嫌いなのは「コミュニティ」じゃなくて特定の「誰か」

 と、いうことを隠して語るからややこしいことになっている。
 そんな印象を、「はてなムラ」話を見て思った。

 もっとも、単純に群れている人間を外側から見てると「きんも~☆」という表明に過ぎないのかもしれないけれど。
 底には、特定の誰かに対する嫌悪感なり敵意なりが滞留しているような気がしてならないんだよな。穿ちすぎかな?

『Number』689号を読んだ。

 まぁ、毎号読んでいるわけですが、秋のG1シリーズに向けての競馬特集であるということと、F1日本GPの記事が掲載されていたので。

 驚いたのは、通常は広告枠の表4(裏表紙)を潰して見開きで一枚のショットを使っていること。表2・表3のページもそれぞれ見開き広告で、都合6ページJRAが押さえていることになる。ほとんど『優駿』も同然。
 ほんとうなら、大月隆寛氏あたりが地方競馬を題材にしたノンフィクションを挟むところなのだろうが‥。難しかったのだろうな。

 しかし。島田明宏氏、片山良三氏、吉沢譲治氏、中田潤氏といったところから、王様(田端到氏)、須田鷹雄氏まで、執筆陣の顔ぶれが10年くらいず~っと変化ない。これはなにも競馬に限ったことではないのだけど。

 F1日本GP関連の記事は、西山平夫氏のレビューが3ページ。
 観客輸送を巡る諸問題についても、土曜日の道路の損壊、Cスタンドからマシンが見えなかったこと、レーススタートに85人の観客が間に合わなかったことに触れている。
 たぶん、さまざまな絡みでこれ以上特定の対象を非難する記事は書けないのだろうけれど、締めを以下のように結んだことが何より西山氏の悲痛さを物語っている。

 夜10時頃になるとさすがに観客の姿もなくなった。が、サーキットビジョンにはいつまでもこんな案内の文字が浮かび上がっていた。
 「現在シャトルバスの運行に全力をつくしています またタクシーにおきましても 地域外のタクシーも動員して 全力で対応しております あわせてご理解とご協力を よろしくお願いいたします」

 この他、今宮純氏の「悲劇は避けられたが・・・・・・、”改善”は避けられない。」というコラムが掲載されていた。雨で視界不良の中レースが強行されたことに関して相当怒っている様子で、「トヨタ傘下の」富士スピードウェイを名指しで批判。「モータースポーツは、視界ゼロでやるようなチキンレースでは断じてない」とまで記していた。

『コモンカフェ』を読んだ。

コモンカフェ―人と人とが出会う場のつくりかた
山納 洋
西日本出版社 (2007/05)
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 ひとことで言って、非常に感銘を受けました。

 筆者の山納洋氏は、大阪ガスが1985年から2003年まで運営していた扇町ミュージアムスクエア(OMS)のマネージャーを務めていた人物で、現在は大阪21世紀協会で文化プロデュース業をされている。
 本書は、山納氏が携わってきた『扇町Talkin’About』『Common Bar SINGLES』『common cafe』などの「シングルズ・プロジェクト」の活動を紹介しつつ、彼の「自分探し」の軌跡を辿っていく。
 企業による芸術文化支援は2002年に曲がり角に差し掛かり、自治体の文化予算は税収減・公共投資の失敗などのため年々削られていく。OMSも施設の老朽化が進み、ビルの維持が難しくなり閉館が決定される。
 資金面での支援が得られない中で、文化的役割を果たしている空間をいかに維持するか。アーティストの経済的な自立のモデルを提示できるか。そういったとてつもない難問に対する、山納氏なりの試みが、ぎっしりと詰まっている。
 個人が経済的に無理なく表現活動を模索していく場は、今後どんどん求められる。そのためには「みんなで」する。では、どのように? そのヒントのいくつかはここで提示されている。
 たぶん、「シングルズ・プロジェクト」で培われたケースの数々は、阪神という「空間」に留めておくには惜しいし、彼らの動きが広く伝わることを願って、本書が出版されたのだろうと思う。「空間の維持」のエッセンスは、場所が変わっても(それがリアルだけには限らず)応用が効くだろう。

 巻末には、『扇町Talkin’About』が実施したイベントの一覧表や、『common cafe』の運営マニュアル・企画書・発注表や日報の例、そしてカクテルのレシピまで収録されている。これからカフェやバーを開業しようと考えているひとは、目を通しておくべきものばかりだと思われる。手元にある居酒屋/カフェ開業マニュアル本数冊と比較しても、こちらの方が具体的だった。

 何にせよ。大阪に行く機会があれば、とりあえず寄ってみたいです。

ドライブ逝った!?

 我が家のGateway MX3301jのDVD-RWドライブが、ディスクを認識できなくなった。原因不明。
 おかげで、AMNブロガーミーティング(参照)で頂いた『ウイルスバスター2008』β版がインストールできずにいる。とりあえず、原因を探って直してから入れますです。

『マッスル牧場classic』を観た。

 テレ玉で10月3日より放映開始された『マッスル牧場classic』。某所で観ました。 
 新番組紹介には、次のような記述が。

 低迷が叫ばれるプロレス界で、一部から熱い注目を集める興行がある。その名は「マッスル」。 時にはリング上でレスラーが突如スローモーションになったり、時には他ジャンルの興行に会場を奪われ、 時に会場ぐるみでドッキリを仕掛ける。演劇をはじめ、 様々な手法をリングに持ち込み、その新しさで観客の大爆笑を誘ってきた「マッスル」が放つ全く新しい形のプロレスバラエティ番組、 それが「マッスル牧場classic」

 うん。プロレス道場の練習風景の映像を作るという楽屋オチだったので、「プロレスバラエティ」で合っている‥よね?
 しかし、前回の北沢大会での本当に切羽詰った雰囲気のマッスル坂井を見た後だと、あの編集のグダグダ感はリアリティ満載。ある意味「ディス編集」と言えるかも。
 
 個人的にウケたのが、「本編」での次のフレーズ。

 小劇場俳優。元大学院生。ゲイ。マジシャン。元特撮俳優。童貞。
 価値観が多様化し、年々深刻になる格差社会が象徴する、このプロレス業界。

 そっか、「マッスル」は日本の社会問題の縮図だったんだ!!

 あと。どうでもいいんだけど。
 スタッフロール、「不良レスラー」として迷演技を披露していた726の名前が抜けてた。