「ペンには訴訟」が論壇を破壊する

 上杉隆氏が読売新聞の記事を盗用したという疑惑をブログで紹介した池田信夫先生と、転載先の『BLOGOS』を運営するNHN Japanを名誉毀損で訴訟したという件(参照)。

 詳細については、Togetterのまとめに網羅されているので、そちらを参照して頂くとして。

 【上杉隆氏盗用疑惑】上杉氏からの訴状が池田信夫氏に到着(Togetter)

 Parsleyのような木っ端ブロガーにとって他人事ではないのは、ある相手と論争になった際、「言論」というフラットな場ではなく、裁判所という場での訴訟というシステムを使った非対称戦を仕掛けられることが、「当たり前」になる事例になってしまうのではないかなぁ、ということ。
 つまり、誰か気に入らない相手の言論があった場合、非論理的でもとにかく訴訟に持ち込んで、指摘した事に対してさらなる言及をすることへの圧力をかける、ということが横行するようになるのではないか、と強く懸念するわけですよ。

 上杉氏の場合、池田先生がご指摘の読売新聞のコピペでないという論拠をご自身のサイトで明らかにすればことが済む問題。実際に100ページに渡る「報告書」を上杉氏自身が出すと言及しているし、それが明確にコピペでないと万人が納得させる論拠があればいいだけの話なのに、「報告書」はまだ公開されずに訴訟で圧力をかけるなんて、端的に言ってむちゃくちゃとしか言いようがない。

 ちなみに。吹けば飛ぶ程度の存在でしかないParsleyでも、過去に数度、書いた記事がポータルサイトに転載された際に「抗議」によって削除される、という事に出くわしている。どれも事実に反していることはまったくなかったのですけれどね。
 紙媒体だと「お詫びと訂正」という形になるので記事そのものが消されることはないのだけれど、ネットメディアやポータルサイトの場合、カジュアルに記事自体を説明もなく消されてしまう場合が多いので、多くの読者にとっては記事が突然消えてしまうことになり、理由も明かされない。
 上杉氏の提訴の場合、池田先生も言論人としては「大物」だし、何よりも「勝てる」からNHN Japanも共同で争う気があるのだろうけれど。これが無名のブロガー・ライターだったなら事を荒立てないでサクッと記事を消すことで「なかったこと」にされる可能性は低くないように思える。
 つまり、書きたいことを「訴訟」もしくは「抗議」という「圧力」をかけることによって封殺するという手法は既に起こっているし、今後それは読者の見えないところでの暗闘が増えるのではないかしら、と強く危惧している。

 少なくとも言論をお仕事にしている方は、批判には言論で対するのが筋だと思うし、メディアにおけるヒエラルキーを利用して既成事実化しようとした上で訴訟という手段を取った上杉氏の行動をParsleyとしては到底支持出来ないし、表現の自由に対する挑戦とすら感じる次第です。

 あと、個人的には上杉氏が代表を務める自由報道協会が公益社団法人と認められた件についてに関心を持っている。もっというと、公益認定にあたっては、「社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること」という定めがあるのだけど(第五条の3)、ほんとうに利益を享受していないのか、少なくともサイトを見る限りにおいてはどうなんだろうという印象を受ける。
 そもそも、公益社団法人として「国」より認可を受けることにより、メディアとしての独立性という面で危ういようにも感じるし、理事のさじ加減いかんによっては特定の政治家や団体に対して利する動きをするのでは、という疑問も残る。
 この件、元切込隊長氏ではないけれど、微々たる力しかない木っ端ブロガーとして各方面に聞いて回ろうかなぁと思っています。

2 Replies to “「ペンには訴訟」が論壇を破壊する”

  1. > もっというと、公益認定にあたっては、「社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること」という定めがあるのだけど
    おっしゃるとおりです。
    わたしは自治体職員として財団法人、社団法人の事務や監査にかかわったことがありますが、上杉氏が代表のこの団体、どこが「公益」なのか、理解できません。
    そもそも報道機関で「公益社団法人」って他に例があるのでしょうか?

  2.  >Nozomiさま
     建前として、自由報道協会は記者会見の開催・公開討論会の開催などを目的としていて、「報道機関ではない」ということになっています。
     <リンク:http://fpaj.jp/wp-content/uploads/2012/04/fpajteikan.pdf>http://fpaj.jp/wp-content/uploads/2012/04/fpajteikan.pdf
     しかしながら、会見に呼ばれる対象にはバイアスがあるのはご存知の通りかと思いますし、「公益」に適っているかは疑問があります。
     また、自由報道協会の会員の多くが<リンク:http://news-log.jp/>『news-log』というサイトで記事を書いており、その関係性が不透明であることなど、数々のグレーゾーンがあると思っています。

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